子ども手当と給食費滞納


 昨年暮れ、福岡県飯塚市が悪質な給食費滞納者に対し、法的措置を講じることが報道された。滞納額を見て、目を疑った。最高額はなんと94万円。同市の給食費は、小学校が1か月3900円、中学校が4700円。1人の子供の給食費を小中学校の9年間滞納しても総額は約41万円にしかならない(2009年4月に値上げされているため、それ以前はもっと安い)。つまり、この94万円滞納世帯は、2人の子供の給食費を中学卒業までまったく支払わず、さらに3人目の子供についても滞納を続けているという計算だ。

 市側がわざわざ「悪質滞納者」と発表したのだから、「支払うことができない」世帯ではなく、「支払う意思がない」ケースだろう。ここまで野放しにしていた行政側の責任も重い。ごね得を許すことによって、まともに支払っている家庭にしわ寄せ(財源不足による値上げや献立の劣化)がいくのだから。

 こういった悪質な滞納問題に絡み、鳩山首相が30日、子ども手当で相殺する仕組みについて「検討する」と述べたという。視察先の甲府市内で、給食費滞納問題に悩む首長から要望を受けてのものだ。「誰にでもいい顔をしたがる」と評される首相だけに、例によってその場しのぎの口約束だった可能性が高い。

 現実に政府が提出している法案には、子ども手当の差し押さえを禁ずる項目があるという。様々な懸案を抱えるこの内閣が、今さら面倒な法案改正に取り組むとは到底思えない。

 しかし、子ども手当は政権公約の中で最重要政策と民主党自身が訴えてきたものだ。もう少しまじめに制度設計に取り組み、滞納相殺の仕組みも真剣に考えるべきではないのか。第一、財源も覚束ないまま、行き当たりばったりで突き進むのでは、「国全体で子供を育てる」など所詮きれいごとで、自ら「ばらまき」であるのを認めたようなものだ。国や自治体がこれ以上借金まみれになって、どうやって子供を育てるというのか。

 子育てを国が支援する。本来ならば、批判など起きるはずがない。なのに子ども手当に対しては「ばらまき」批判などまだましな方で、「パチンコ手当」「モンスターペアレンツを子供成金にする」、さらには「盗人に追い銭」とまで酷評する人さえいる。

 こういった酷評はある種の家庭に対してだけ向けられているのを、内閣はちゃんと理解すべきだろう。分かりやすく言えば「給食費や保育料も払わず、携帯やパチンコには金を使うような者にまで手当が支給されるのは納得いかない」ということだ。手当だけはしっかり受け取りながら、給食費を払わないなど、まさに盗人に追い銭だ。こんな不心得者をのさばらせないよう、子ども手当と滞納相殺の仕組みづくりはぜひとも必要だろう。

 写真は国会議事堂。
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東福岡相手に14人

旧聞に属する話2010-東福岡変更

 高校ラグビー日本一の東福岡高相手に、ある県立高校が14人で戦いを挑み、5-138の記録的大差で散った。1月24日に行われた高校ラグビーの福岡県高校新人大会準々決勝の1試合だ。

 この県立高校の部員は16人。うち1人が故障で出場できない状態で、もともとリザーブなしで新人大会に臨んでいたらしい。初戦の3回戦は突破したものの、この試合でFWの要ナンバーエイトが鼻骨を骨折。当然ながら、医者にはすぐに手術するよう勧められたが、手術を受けると、試合に出場できなくなる。彼は手術を東福岡戦後に遅らせることにし、普段通り練習を続けていたという。

 だが、不幸にも試合直前の練習でまたけがを負ってしまう。こうなっては是非もない。チームは14人で、あの東福岡と戦うことを決断した。ただ、キックオフの時に15人そろっていないと試合は成立しないため、負傷のナンバーエイトは最初だけ出場し、ゲームが切れ次第、退くことになった。残る14人のうち、7人が1年生。高校でラグビーを始めた者が大半だ。彼らは「試合が終わって無事だったら、ラーメンを食べに行こう」と約束していたと聞いた。冗談交じりとはいえ、悲壮な覚悟だったようだ。

 この高校、ベスト8に残っているのだから、基本もできていないようなチームでは決してないが、何しろ相手が悪すぎる。FWの平均体重ひとつをとっても20kgは重い相手だ。そのうえ1人少ないのだから、試合は一方的なものとなった。時折強烈なタックルで東福岡のノックオンを誘っても、スクラムでマイボールをまったく維持できない。前半を終わって0-67。

 後半も開始早々に東福岡が1トライ。一家言ありそうな外野席から相当に辛辣な声も飛び交い始めた時、ちょっとした異変が起こった。相手のプレッシャーにまったく太刀打ちできなかった7人のFWが、スクラムを耐えに耐えてBKにボールを供給したのだ。これを大事に展開し、最後は1年生ウイングがタッチライン際を激走し、ゴールに飛び込んだ。だが、この1本が東福岡の闘志にさらに火をつけ、前半以上のトライラッシュとなった。

 5-138。格闘技ならとっくにタオルが入っているようなスコアだ。ラグビーは実力差が試合に出やすい競技で、番狂わせなど滅多に起きないと言われる。全国大会の佐賀県予選では過去に300-0のゲームもあったと記憶しているが、どんなに大差がついても野球のようにコールドゲームはない。力劣る者は、まさに完膚なきまでにたたきのめされる過酷さだ。屈辱的敗戦の中、1本のトライを糧に、県立高の選手たちはどこまで成長できるか。15対15での再戦に期待している。
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中学版「花園」開催へ

旧聞に属する話2010-鯛生

 数年前、中学ラグビーのブロック大会ですごいシーンを見た。劣勢のチームが終盤、ダメ押しとも思えるトライを決められた時だ。下級生と思われる選手がガックリうなだれていると、主将らしき選手が「下を向くな!まだ終わっていない」とどなりながら、下級生の顔をボコーンと下から殴りあげたのだ。本当に「ボコーン」と音がするぐらいの激しさで、殴られた子は痛さと(おそらく)悔しさでボロボロ涙を流し、そしてノーサイドまでの数分間、鬼気迫るような表情でプレーを続けたのだ。

 中学ラグビーの特徴は、15人制ではなく、FW5人(第3列がない)の12人制であることだ。これ以外は、基本的なルールはほぼ同じ(だと思う)。人数が少ない分、選手一人ひとりが、高校・大学以上に過酷な試合を強いられることもある。ある大学のラグビー場を借りて行われた中学生の大会で、こんな場面にも出会った。

 その大学の部員らしい数人が試合を観戦していた。中学時代にはラグビーの経験がなかったのだろう。「スクラムは押してはいけないんだな」などと興味深そうに話し合っていたのだが、徐々に口数が少なくなり、最後には黙りこくってしまった。対戦しているチームには明らかに力の差があった。一方のチームが次々にトライを決める。もう一方は、試合途中から12人全員がグチャグチャの顔だった。それでもあきらめることなく、ただひたすらタックルを続けた。確かに、応援の保護者すら言葉を失うほど、凄絶な試合だった。

 元日の読売新聞に「中学版『花園』開催へ」という記事が載った。日本で開催される2019年のラグビーワールドカップに向けて、主力となる選手を発掘することなどが狙いだという。長野県・菅平で今夏、第1回大会が開催される。

 中学生世代の全国大会としては、全国高校ラグビー開催期間中、同じ花園で選抜チームによるジュニアラグビー全国大会が開かれているが、注目度はゼロに等しい。今季の大会は12月29、31日に開かれ、大阪勢同士の決勝戦の末、大阪府中学校選抜が優勝を飾ったが、結果を速報したメディアは、日本ラグビー協会のホームページぐらい。当の読売新聞も全く報道していなかった。単独チームによる初の日本一決定戦開催は、ラグビー少年たちの大きな夢となるのは間違いない。その分、日本一が決まるまでには、多くの子供たちが過酷な試合を経験することになるのだろう。
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