偏食ミドリガメ2

旧聞に属する話2010-マルくん2

 我が家にやってきた偏食カメさんは、だいぶ食欲が出てきたようで、毎朝きっちり食事を取るようになった。ただし、食べるのは、相変わらずタイの刺し身だけ。ほかのものには見向きもしない。タイの刺し身など、いつもいつも買っている訳はない。ごくまれに食卓に上がった時にカメの分を取り分け、細かく切って冷凍しているのだ。完全に解凍したものよりは、まだ冷たい半解凍のものをどうも好むようだ。

 名前は「マル」という。一部の知り合いから「おいおい、『マル』って食うつもりかよ」と言われた。関西地方ではスッポンのことを「まる」といい、「まる鍋」だの「まる雑炊」などの料理があるらしい。甚だしい誤解だ。第一、うちにいるのはミドリガメだ。いくらなんでも食べる人はいないだろう。

 実は最初は「イチハシくん」という名で呼んでいた。ちょうど拾ったのが、整形して逃亡していた“彼”が逮捕されたころだったのだ。ところが、家人が「そんな犯罪者の名前をつけて」と嫌がった。しかも、餌をまったく食べないところが、逮捕直後に絶食を続けていた彼と重なり、これは確かに縁起が悪そうだと思い、改名した。マルという名は「丸でも四角でも、この際何でもいいだろう」という非常に投げやりな理由でつけたのだが、いつの間にか「マル」と呼ぶと、水面に顔を出すようになった。単に音に反応しているだけかもしれないが、こういう姿を見せてくれると、拾ったカメでも情が移るものだ。

 だから、拾った当初は「金、手間をかけない」で飼う方針だったのに、寒いだろうからとスタンドを改造してスポットライトを作ったり、様々な配合飼料を買ったりと、それなりに金も手間もかけてしまった。極め付きは、1か月ほど前に買ったメダカだ。もちろん、友達をつくってやろうとした訳ではない。あんまり餌を食べないものだから、生き餌をやって刺激を与えようとしたのだ。7匹を買ってきて、試しに1匹をカメの水槽に入れてみた。ひょっとしたら「マル」が喜んで追いかけ回すのでは、と期待して…。

 結果は、どうなったか? 最初のうちはメダカが「マル」を警戒して逃げ回っていた。しかし、「マル」は完全に無視。そのうち、メダカが安心したのか、平気で「マル」の顔の前を泳ぐようになった。「これはダメだ」とメダカを別の水槽に移し、今も7匹は元気に泳いでいる。カメに加え、メダカの世話まで日課になってしまった。
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