X病院の都市伝説

旧聞に属する話2011-X病院

 福岡市のとある病院(仮にX病院としておく)を巡り、周辺住民の間で一時、こんなうわさ話が語られていた。

 病院近くの交差点で交通事故が起こり、負傷者が出た。幸い目の前に救急指定のX病院がある。すぐに担ぎこもうとしたところ、通行人の女性がこう言って押しとどめた。「私はこの病院の看護師です。助けたいのならば、ほかの病院に運んでください」

 もうひとつ似たような話がある。救急車で搬送される人が、救急隊員にどこの病院に運ぶのかと尋ねた。X病院との答えに、この人は憤然として叫んだという。「お願いだから、その病院だけはやめてくれ!」

 どちらの話にも「あの病院に入院すると生きて帰れない」という落ちがついていたが、一種の都市伝説みたいなものではないかと思っていた。これほど不名誉な噂が流布している割に、病院は相当に繁盛しているように見えたからだ。医療過疎地帯にあるわけではない。本当に危うい病院ならば、とっくに患者から見放されているだろう。

 図らずも家族の一人が最近、この病院に入院したのだが、診療水準は患者にとって信頼に足るものだった。うわさに信ぴょう性がなかったことを確認できたわけだが、同時に、なぜそんなうわさが生まれたかを何となく推測することもできた。救急車で運ばれる患者がとにかく多いらしいのだ。
 
 家族によると、入院中、救急車のサイレンが聞こえなかった日はなく、ある日など消灯から数時間の間に少なくとも5台以上の救急車がやってきたという。福岡市でも救急車をタクシー代わりに使う不心得者が問題になっているが、重篤な患者もまた多いはずだ。救急患者を多く受け入れれば、病院の救命率はその分下がることだろう。それが「生きて帰れない」という無責任なうわさを生んだ要因だったのではないか。必死になって患者の命を救っている病院関係者には迷惑な話だろうが…。

 ちなみに私の家族がX病院にかかったのは、別の某大病院から「この病気はX病院の方が診療体制が充実しているから」と紹介されたためである。
関連記事
スポンサーサイト
[Edit]