こども病院はどこへ行く

旧聞に属する話2011-こども病院

 東日本大震災は直接被害のなかった西日本にも影響を及ぼしている。福岡市では、こども病院の博多湾人工島(アイランドシティ)移転が長いこと論議を呼んでいるが、大震災の発生を受け、埋立地への移転を危惧する声が勢いを増しているようなのだ。

 この問題を巡っては現在、高島宗一郎市長の市長選での公約に基づき「こども病院移転計画調査委員会」が開かれている。委員の中には、人工島移転に反対してきた患者家族代表も含まれているが、先頃開かれた会合では、震災により大規模な液状化現象が起きた千葉県浦安市の惨状を示し、埋立地移転の危険性を強硬に訴えたらしい。新病院が十分な耐震設計であることを強調する市側に対し、傍聴席からは「想定外を考えろ!」との野次も飛んだようだ。

 患者家族の立場として非常にもっともな意見だとは思うし、多くの市民の賛同も得ているようなのだが、だからと言って、彼らが主張する現在地建て替えが妥当なのだろうか。現病院は菰川という小河川の河口近くにある。さらにすぐ東側には、警固(けご)断層と呼ばれる活断層が走っている。今回の大震災のような「想定外の事態」が起きれば、人工島と同様、無事では済まない可能性もあるだろう。

 以前にも書いたが、人工島は福岡市にとっての不良資産みたいなもので、莫大な費用を投じて埋め立てたものの大量の土地が売れ残っている。こども病院移転が、売れ残った土地処分のためであるのは明らかであり、移転決定に至るプロセスにも不明朗な部分が多々あった。調査委員会はこのプロセスを検証するためのものと私は理解しており、実際に委員会の場では、現地建て替え費用の見積もりにおいて、市が市民を欺いてきたことが暴露された。建て替え場所を人工島に決めるためには、なりふり構わなかったことが明らかになったのである。しかし、その一方で反対派の主張にも少々違和感を感じた。

 人工島にはすでに4000人近い人が住んでいる。しかも、小学校区別の人口統計で判断する限り、患者家族と同様に子育て世帯が圧倒的に多い<注>。なのに反対派は、この場所を雪が降っただけで交通が途絶する場所だと非難し、地震が起きれば液状化現象で壊滅する危険地帯だと断じたのである。懸念は分かるが、そこに住んでいる人への配慮はあったのだろうか。人工島住民の中には、こういった主張にうんざりし、こども病院を毛嫌いする声も生まれていると聞く。不幸なことである。

 調査委員会の最終会合は4月17日に予定されている。そこでどのような結論が出されるのか。少なくともこれまでの議論では、新たな候補地の選定や評価にはほとんど踏み込んでいないように思う。

 <注>福岡市教委がまとめた校区別の世帯数・年齢別人口によると、人工島(照葉小学校区)の人口は昨年12月現在で1317世帯、3865人。うち14歳未満が1306人を占めている。
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