工場萌え

旧聞に属する話2010-工場2

 「工場萌え」と呼ばれる人たちが世の中にいるという。25日の読売新聞地方版で初めて知った。同紙によると、「無機質な煙突や配管、タンクなどの景観に美を見いだし、眺めて楽しむ」人たちのことを言うらしい。なぜ、新聞が彼らのことを取り上げたのかというと、かつて「4大工業地帯」のひとつとして栄えた北九州市が、工場萌えの人たちに目をつけ、今も市内に多数残る工場群を、観光資源として売り出すことにしたからだ。

 「4大工業地帯」と書いたものの、恐らく若い人には聞き慣れない言葉だろう。現在の社会科では、京浜、中京、阪神で「3大工業地帯」として教えているようだが、1970年代ごろまでは、これに北九州が加わっていたのだ。このまちの中心産業だった重工業の地盤沈下で、「4大」からは陥落したものの、有名な新日鉄八幡をはじめ、写真の住友金属小倉、三菱化学黒崎、安川電機など、今も昔も工場集積はすごいものがある。工場萌えの人たちには、確かに魅力的なスポットになり得るだろう。

 このまちは以前から、工場巡りを観光として売り出していた記憶がある。ただし、「産業観光」という堅苦しい名前だった。要するに、小学生の社会科見学の大人版みたいなもので、高度成長を担った工場群を見学し、日本の近現代史なりに思いをはせてもらおうという、かなり高尚な企画だったと思う。それなりの実績を(多分現在でも)挙げているはずだ。場所は同じでも、対象とする人が違えば、まったく別の観光資源になり得る。萌えではあまりにノリが軽過ぎ、役所のお遊びのような気もするが、ここは着眼点が良いと賞賛しておくべきだろうか。

 北九州ではほかに、工場街や町並みを映画などのロケ地として売り込む活動にも、官民挙げて取り組んでおり、なかなかの成果を収めているようだ。何しろこのまちには(次第に消えつつあるとは言え)今もノスタルジックな町並みが各所に残っており、「三丁目の夕日」みたいにバンバンCGを使わなくても、昭和を舞台にした映画が撮れたりする。昨年公開され、中高年世代に結構人気だった「おっぱいバレー」が好例だろう。あの映画の主演は綾瀬はるかだったが、バカな子供たちと北九州の町並みなしには出来なかった作品だと思う。

 こういった、あれやこれやの活動で、せっかく北九州のイメージアップを図っても、暴力団が住宅街のど真ん中に事務所を構えたことで、すべてが台無しになった。あげくに暴追運動のリーダー宅への銃撃事件まで起きた。北九州のイメージアップの試みは、どうしていつも徒労に終わるのだろう。非常に残念なことだと思う。
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