「修羅」中学校の思い出

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 私が中学生になったばかりのころの話だ。昼休みに2人の男子生徒(仮にA、Bとしておく)が殴り合いのけんかをした。翌日、当日は休みだった別の男子生徒Cとこのけんかが話題になった。Cが「どっちが勝ったんだ」と尋ねるので、「Aだ」答えると、「おかしい」と反論してきた。

 その理由がすごい。A、B、Cの3人は私とは別の小学校出身なのだが、Cが言うには「Bは小学校で十何番目にけんがが強かった。Aはずいぶん下だ。勝てるわけがない」。彼らが卒業した小学校には、なんと数十人の男子全員を対象にした“けんかの強さランキング”があり、A、Bの勝敗はかなりの番狂わせだったということらしい。中学生になると、成長具合で小学校時代の力関係が逆転することはままあることだ。

 それにしても、私の出た小学校でも「誰それが一番強い」などと言い合ってはいたが、ボクシングじゃあるまいし、そんな詳細なランキングなどあるはずがない。「一体どうやって決めたんだ?」と質問したところ、Cの答えは「そりゃ毎日休み時間のたびに誰か彼かがジャンジャンけんかやっているんだから、勝ち負けを覚えておけば、簡単だ」。ちなみにCは「俺はベスト10に入っていた」という。

 それを聞いた私はとんでもない学校に入学してしまったと心底震え上がった。そんな連中が数十人もいるのである。そう言えば、確かにけんかは日常茶飯事だし、上級生たちは煙草臭いし、卒業したばかりの人間が学校に車を乗り付けてきたこともあった。“中学”を卒業したばかりの人間である。何でもこの卒業生は金貸しになったとかで、顔見知りの後輩に親切にも「金を借りんかい!」と言いに来たのだという。

 某巨大掲示板で我が福岡県は「修羅の国」と呼ばれている。修羅の国とは多分、マンガ『北斗の拳』に出てくる架空の国のことだろう。この国は暴力が支配しており、「男子の生存率は1%」と評されている。地元をけなされ、腹の立つ話ではあるが、銃や、普通じゃあり得ない手榴弾を使った犯罪が続発しているのだから、文句は言えない。それどころか数十年前の中学時代を思い出し、妙に納得さえしてしまった。

 家庭の事情で私は1年で転校した。この中学校は、福岡市西部に今も存在している。私の在学当時、周囲は山と田んぼだけで、上級生たちは裏山で一服を楽しんでいた。1年生にはバカみたいに厳しかった教員どもも、明らかに煙草臭い上級生は黙認していた。面倒を抱えたくなかったのだろう。ごみ同然の教員集団だった。学校の周囲には現在、住宅が立ち並び、当時の面影はまったくなくなった。「修羅の国」みたいな校風も今では変わっていることだろう。多分。
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