旧直方駅は初代博多駅?

 福岡県直方市にあるJR直方駅の新駅舎がこの春完成した。直方市は大相撲の大関魁皇の出身地として知られるところで、結局は実現しなかったが、新駅の開業式典には魁皇関も一日駅長として出席し、盛大に祝う予定だった。ここまではおめでたい話なのだが、お役ご免になった旧駅舎を巡って同市では今、ちょっとした対立が起こっている。

 市やJR側は旧駅舎を取り壊し、跡地を駅前広場にする計画なのだが、これに一部市民が「貴重な文化財だ」と猛反発しているのだ。旧直方駅舎は初代博多駅が移築されたとの説もあり、問題をややこしくしている。これが事実ならば、現存する中では日本でも最古の部類に入る木造駅舎となるらしい。

 直方駅の歴史を『直方市史』下巻(1971年刊)でひもといてみると、1891年(明治24年)8月、筑豊興業鉄道によって設置されたのが最初で、1907年(同40年)の国有化に伴い、駅舎新築と構内拡張工事がスタート。1910年(同43年)3月に問題の駅舎が完成したことになっている。

 一方、博多駅は1890年(同23年)に初代駅舎、1909年(同42年)に2代目の駅舎が完成しており、初代博多駅移築説に年代的な不都合はない。旧直方駅舎の建築資材を調べた研究者は「可能性は高い」と太鼓判を押したのだという。

 報道等によると、ところが、現在の直方市長は「初代博多駅移築説など知らない」と保存を真っ向から拒否し、調査することさえ頑なに拒んでいる。理由の一つは「金がない」ということらしい。財政難とは“役所がやらない時”の一番便利な言い訳だが、それなりに説得力があるのも確かだ。

 ただ、この市長、直方駅前一帯に明治から昭和初期にかけての建物が多数残っていることに着目し、レトロタウンとして売り出す構想を持っているようなのだ。旧直方駅舎が、仮に初代博多駅舎でないとしても、明治末に完成したバリバリのレトロ建築物であるのは間違いない。構想に本気で取り組む気があるのならば、旧駅舎の取り扱いにもう少し慎重さがあっても良いと思うのだが…。

 初代博多駅移築説を一般に広めたのは、恐らくJR九州自身ではないかと思う。同社が1989年に刊行した『九州の鉄道一〇〇年記念誌 鉄輪の轟き』の中に、直方駅について、しっかりこう記述されているのだ。「明43.3 駅舎の改築完成。初代博多駅舎を移転」(下の写真参照)。JR九州は、取り壊しに加担する今になって「裏付けが取れない記述だった」という趣旨のことを言っているようだ。いい加減な話である。


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