福岡市が登録文化財制度新設

20120315001.jpg

 福岡市が4月から、登録文化財制度を新設することを決め、そのための文化財保護条例改正案を開会中の市議会に提案している。登録文化財とは、都市化の進展で急速に失われつつあった近代遺産(主に建造物)に緩やかな保護の網をかけるため、1996年の文化財保護法改正で新設された制度だ。第1号の国登録文化財には東大安田講堂などが選ばれている。市町村レベルで登録文化財制度を持っているところは恐らく少ない。近代遺産保護に力を注いできたとは到底思えない福岡市が、なぜ今になって制度新設を思い立ったのだろうか。

 条例改正案は市議会のHPに掲載されているが、これだけでは新設の意図はわからない。担当課(市教委文化財整備課)に電話で尋ねてみたが、担当者が不在とのことだった。仕方がないので、ネット上で情報を探したところ、すでに同様の制度を設けている東京・国立市がHP上で考え方や仕組みを説明しており、導入の目的として以下の3点を挙げていた。

 1.行政区内の文化財を広く把握する
 2.広範囲な文化財の保護
 3.優品主義的な文化認識から、価値観をより広く捉えた文化財保護に対する意識高揚

 あくまでも他市の事例なので、参考情報でしかないが、恐らく福岡市の狙いもそう大きく異なることはないだろう。しかし、この役所は今まで数多くの近代遺産が取り壊されるのを見殺しにしてきた。2002年に解体撤去された旧雁ノ巣飛行場の格納庫(写真)などが良い例だが、歴史ある街なのに伝統的建造物は極めて少ないことが何よりの証拠だろう。産業考古学や建築史などの分野の研究者で、近代遺産に対する福岡市の冷淡な態度を指摘する人は少なくない。

 最近も似たような事例が報道されていた。博多区にあった築100年以上の貴重な町家が取り壊されることになり、これを惜しんだ漫画家の長谷川法世さんらが中心となって博多湾に浮かぶ能古島の公園内に移築した。1000万円を超える移築費用も公園側や法世さんらが工面した。市側は以前に町家を調査し、文化財級との評価を下していたが、指定すると居住者が改修しにくくなるとの理由で見送っていたという。結果として、この町家保存には何の役割も果たさなかったということだ。長谷川さんらが立ち上がらなければ、すでに取り壊されていたことだろう。

 登録文化財制度新設が、遅まきながらもこういった事例の反省に立ってのものならば、それなりに評価されるべきだろうが、私は市の開発サイドに悪用されないかを恐れている。本来は指定文化財として保存すべき物件が(規制の緩やかな)登録文化財にとどめられ、かえって将来の取り壊しの道を開かないか。杞憂であればいい。

関連記事
スポンサーサイト
[Edit]