日清製粉のしもべ


 福岡市中央区の須崎埠頭の旧市有地(写真)に、日清製粉の新工場が建設される。九州地区で同社は現在、佐賀県鳥栖市と福岡県筑後市の2か所に工場を抱えているが、原料の輸入小麦荷揚げ地である須崎埠頭に工場を集約し、輸送コストを削減する狙いだ。これに応え、市が1.2haの市有地を工場用地として用意したわけだが、市有地売却を審議した昨年12月をはじめとする議会の会議録を読むと、一私企業に対する市の厚遇ぶりが浮き彫りになる。一部野党会派が反対しただけで市議会は売却を認めており、いまさら問題視するには当たらないのだろうが、まるで日清製粉に奉仕するかのような市の態度が気になった。

 土地の売却価格は12億5600万円。1平方m当たり約10万3000円で、先頃分譲価格が値下げされた人工島と同水準だ。この価格自体は破格の安値という程ではないが、問題はこの場所に市所有の上屋があり、流通企業が入居していたため、建物解体や移転補償費で計10億1900万円がかかったという点だ。これを差し引けば、土地売却益は2億3700万円に過ぎなくなる。

 昨年6月議会の時点では、売却額の見積もりはさらに低く、収益は1億円程度と見込まれていた。市議会常任委員会でこの点を厳しく追及された市側は「工場建設で市に新規雇用が生まれる」と経済効果の点から理解を求めた。ところが、「鳥栖・筑後工場の従業員が配転となれば、雇用は生まれないではないか」とたたみかけられると、今度は「小麦の荷揚げから加工まで一か所で行うので、地球に優しい物流になる」と言い出した。こうなると苦し紛れの詭弁である。

 用地交渉自体も、日清製粉が工場を廃止する鳥栖・筑後市側の理解を得るまでは内密に進められたため、市議会はおろか、上屋からの退去を求めることになる企業側にも明かされていなかった。同社が工場集約を記者発表した後、入居企業との交渉に入るというドタバタ振りで、野党議員によると「福岡市は日清製粉のしもべ同然」である。

 それにしても港湾用地ならば広大な土地が売れ残っている人工島があるはずなのに、なぜ、わざわざ多額の費用をかけて須崎埠頭の土地を提供するのであろうか。不思議に思ったが、会議録を読み込むと、やはり市側も最初は人工島の土地購入を持ちかけていたことがわかった。ところが、日清製粉側がうんと言わなかった。もともと須崎埠頭に小麦を荷揚げしていたという事情もあるだろうが、人工島とは企業にとってよほど魅力がない土地のようだ。
関連記事
スポンサーサイト
[Edit]