執行の日の福岡拘置所


 1年8か月ぶりに死刑執行が再開された29日夕、福岡市早良区の福岡拘置所を見てきた。ここでもこの日、松田康敏死刑囚(44)の刑が執行されている。2001年、宮崎県内で2人の独居女性を相次いで殺害し、金を奪った罪で2007年に刑が確定していた。再審請求中と聞いていたので彼の執行を聞いて意外に思ったが、再審請求に触れた報道がなかったことを見ると、すでに請求は棄却されていたのだろう。当然のことだが、拘置所の様子には何の変化もなかった。(追記=正確には再審請求中ではなく、請求準備中だったらしい。ただし、松田死刑囚本人や死刑廃止団体などは再審請求が行われているものと理解していたようだ)

 執行後の小川法相会見を報じた記事等によると、法相は決断の理由の一つとして裁判員裁判で13人に対して死刑判決が出ていることを挙げたという。「国民が苦しんで判断を下しているのに、法相が職責から逃れることは許されない」ということのようだ。

 2009年5月に裁判員制度が始まる際、死刑廃止を訴える団体は導入に強く反対していた。一般市民の処罰感情に引きずられ、死刑判決が乱発されかねないという理由だったと思う。しかし、裁判員たちの会見記事を読む限り、彼らが一時の処罰感情に引きずられて判決を下したとは決して思えない。だからこそ、死刑求刑事案の中には無期判決が下ったケースもあれば、鹿児島の高齢夫婦殺害事件のように「物的証拠がない」として無罪としたケースさえある。また、死刑判決の中にはすでに2審の判断が下った事例が2件あるが、いずれも裁判員の判断は覆っていない。きちんとした裁判が行われた証明だろう。

 一般市民の理性を信用していなかった死刑廃止団体にとり、裁判員誰もが苦しみながらも冷静な判断を下し、このことが法相の決断を促すことになるなど想定外の出来事ではないだろうか。以下に裁判員裁判で死刑判決が下った13人と事件概要などを記した。カッコ内は1審判決日と判決を下した地裁名。2人の被告は控訴を取り下げ、すでに死刑が確定している。死刑廃止派はこれらの死刑判決に対し、「弁護次第では何件かは無期だった可能性もある。弁護が裁判員に届いてない」という危機感を持っているようだ。

  •  池田容之(2010.11.1横浜)マージャン店経営トラブルから2人を殺害。切断した遺体を横浜港に遺棄。控訴を取り下げ死刑が確定。
  •  少年(2010.11.25仙台)石巻3人殺傷事件。元交際相手の実家に押し入り、元交際相手の姉と知人女性を殺害。
  •  奥本章寛(2010.12.7宮崎)妻と生後6か月のわが子、妻の母を殺害。2審福岡高裁宮崎支部も死刑判決。
  •  伊能和夫(2011.3.15東京)南青山高齢男性強殺事件。妻子を殺害して20年服役、出所半年後の事件のため極刑に。
  •  松原智浩(2011.3.25長野)池田薫(12.6)伊藤和史(12.16)勤務先の経営者宅に押し入り、経営者と長男夫婦を殺害し、現金約410万円を強奪。松原被告には2審も死刑。
  •  津田寿美年(2011.6.17横浜)アパートの隣人夫婦がうるさいと2人と、隣人の兄でもある大家を殺害。控訴を取り下げ死刑が確定。
  •  桑田一也(2011.6.21静岡・沼津支部)約1000万円の借金返済を免れようと交際相手を殺害、5年後には妻も殺害した。
  •  竪山辰美(2011.6.30千葉)千葉大生の自宅に侵入、帰宅した大学生から金などを奪った後に殺害。さらに放火して逃走した。
  •  田尻賢一(2011.10.26熊本)遊ぶ金のために借金を繰り返し、その返済などのために2件の強盗殺人を犯し、3人を殺傷。
  •  高見素直(2011.10.31大阪)パチンコ店放火殺人事件。5人を殺害、10人に重軽傷を負わせる。
  •  新井竜太(2012..24さいたま)いとこと共謀、いとこの養母を殺害して保険金を詐取。金銭トラブルからおじも殺害。いとこには無期懲役判決。
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