福岡県公会堂貴賓館



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 建築や産業遺産を研究している人にとって、福岡は魅力がないというか、腹立たしい街らしい。古来から開けていたのだから、長い歴史を持っているのだが、その割に古い建物がないのだ。近代化や高度成長の過程で、古い建物を次々に取り壊していった。それなりに発展してきた街なのだから、ある意味当然なのだが、それにしても近代化の生き証人に対する畏敬の念がなさ過ぎた。旧・福岡県公会堂貴賓館(写真)や、旧・日生九州支店などは希有な例外だ。いずれも現在は国の重文に指定されている。

 福岡県公会堂貴賓館は、1910年(明治43年)に九州沖縄八県連合共進会が開かれた際、来賓接待所として建設された。この時の共進会とは産業博覧会のことで、和牛の品評会ではない。建物はその後、福岡高裁、水産高校の校舎など様々な施設に転用され、1956年から81年までは県教育庁舎として利用された。教育庁時代を記憶している人も多いが、オフィスとしては非常に使いづらい建物だったという。

 一帯には県庁舎を始め、県の施設が立ち並んでいた。いずれも堂々たる近代建築であり、81年の県庁移転の際には、保存を求める声も多かった。だが、残ったのは貴賓館だけ。この建物にしても、一体保存を図るべきだとの要望に反し、公会堂部分は取り壊された。福岡という街、観光地として見るべきところは少ないと酷評されているだけに、旧県庁舎群が文化施設などとして保存活用されていれば、と惜しまれる。市中心部のレトロな街並みは強力な観光資源になっただろうに。あの東国原知事で人気を集めた宮崎県庁舎が、最近では古くて重厚な建造物としても注目を浴びていると聞けば、なおさらだ。

 福岡は今後数年内に、大正から昭和初期に建てられた貴重な建造物群をどうするか、再度決断を迫られることになる。九州大箱崎キャンパスの校舎のことだ。現役の校舎のため文化財指定こそ受けていないが、その価値は十分にあるであろう建築物が林立しており、その数は10を超える。

 九州大は現在、箱崎キャンパスを市西部の伊都キャンパスに移転中で、計画が順調に進めば、今から9年後には完了する。跡地をどうするか。街から学生が消えることに大変な危機感を抱いている地元は、跡地への市立中学校移転、単科大誘致などの活用策を早くもまとめ、福岡市に提言している。校舎群を残すには、やはり学校として活用するのが最善であり、その意味で地元の提案には傾聴すべき点が多いと思う。問題は、果たして誘致できる大学があるかだろう。対応を急ぐべきだと考えるが、肝心の市は「これから検討しましょう」という段階で、少々心もとない。
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