医療扶助の怪

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 福岡県の公式サイトに、4月の生活保護速報が掲載されている。保護を受けている世帯数や保護費総額などを市郡別にまとめたもので、県の保護・援護課が毎月公表している。生活保護のあり方がいろいろ問題となっている折でもあり、初めて数字をじっくり見てみた。この問題に関心を持ってきた人にとっては「今さら」の話だろうが、医療扶助のあまりの多さにびっくりした。

 福岡県全体の数字を紹介すると、4月に生活保護を受けたのは9万2248世帯13万543人で、保護費の総額は184億308万円だ。1人当たりの金額は約14万円。ただ、この数字は生活費だけでなく、住宅・医療・教育・介護などあらゆる扶助を足し合わせた数字で、実はこの5割以上を医療扶助が占めている。医療扶助に限った額は101億9426万円で、1人当たり約7万8000円にも上る。生活保護者1人が4月1ヶ月で使った医療費がこの額なのである。

 私も中高年になって体にがたが来たので、昔は縁のなかった病院によく行くようになった。それでも年間の医療費総額は、仮に全額自己負担であってもこの数字に及ばない。何かの間違いではないかと思い、厚労省の発表資料を探してみたら、下の表が見つかった。2009年の1人当たりの年間医療扶助費を都道府県別に示したものだ。全国平均が81万5000円、福岡県がこれを大きく上回る94万9000円。今年4月の7万8000円を単純に12倍すれば、93万6000円で、近い数字になる。やはり間違いではなかったのである。

 なぜ、こんなに医療費がかかるのだろう? 福岡県の速報によると、保護世帯のうち、高齢世帯が43.7%、障害世帯が8.7%、傷病世帯が19.6%を占めている。もともと大きな病気を持っているから働くことができず、生活保護に頼っている人がいるのは確かなのだろう。高齢になれば、病院に行くことも増えるに違いない。しかし、厚労省が昨秋に発表した2009年の1人当たりの国民医療費は28万2400円にしか過ぎないのである。単純に比較はできないかもしれないが、生活保護者平均の3分の1だ。

 そう言えば最近、こんな噂話を聞いた。病院は生活保護者には必ず最高級の医薬品を勧めるとか。全額国が支払ってくれるため医療費滞納の心配などないからだ。生活保護者が処方された薬をネットで転売したり、病院がぐるになって必要もないのに長期入院していたりといった悪質なケースもニュースで見かけるようにもなった。民主党政権は保護費の減額に言及しているが、メスを入れるべきは明らかに医療扶助の方だろう。不正同然の受診を抑えるため、1割程度の自己負担は保護者にも求めてはどうか。もちろん「本当に必要な人」のための制度設計はきちんと行ったうえでだ。

 年金暮らしの私の親族は、医療扶助の額を聞いて卒倒しそうだった。“普通の高齢者”にとって医療費負担はバカにならないのである。ネット上でささやかれている「生活保護貴族」という言葉が思い浮かんだ。写真は福岡県庁。


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