ホームドア


 私は金がないので外ではほとんど飲まないのだが、たまに飲み会に出ると「会費の元は取るぞ」と意地汚く飲みまくるので、帰宅時はいつもベロベロである(酒を飲めば、どんな時もベロベロだが)。最近は泥酔すると記憶まで飛ぶようになった。翌日、自分がどうやって帰宅したかをまったく覚えていないのである。話には聞いていたが、まさか自分も同様の状況に陥るとは思ってもいなかった。

 こんなこともあった。飲み会の翌朝、通勤で地下鉄の自動改札機を通ろうとすると、ICカードが何度もはじかれ入場できない。おかしいと思って駅員にカードを点検してもらったら、「昨日の夜に某駅に入場しているが、どの駅から出たのかカードの履歴に残っていない」と言われた。要するに、カードの履歴上は自動改札機を通らないで駅外に出たことになっているのである。酔っ払いが改札機を乗り越えていたら100%警察のお世話になっているはずなので、恐らくすり抜けたのだろう。

 こんな情けないオジサンが無事帰宅できるのは、福岡市営地下鉄の3路線全35駅に転落防止のためのホームドアが設置されているお陰である。私が普段利用している空港線(13駅)には2004年3月に設置が完了したが、年平均で11件程度あった線路への転落事故がこれ以降はゼロになった。転落していたのは私のような酔っ払いが多かったようだが、ホームドア設置を何より喜んだのは視覚障害者の方々だろう。彼らにとって駅のホームは「欄干のない橋」だという。

 全国の地下鉄で最も早くホームドアを採用したのは、2000年に全線開業した東京メトロの南北線だが、現在、各地で進められている既存駅への設置に関しては福岡市営地下鉄をモデルにしたところも多いという。また、2005年開業の七隈線のバリアフリー思想は、実際に利用した障害者(特に視覚障害者)から絶賛されているとも聞く。福岡絡みではろくなニュースがない昨今だけに、少々誇らしい思いだ。

 国交省のサイトによると、ホームドアが設置されている鉄道駅は全国で519駅。莫大な費用がかかる(福岡市営地下鉄空港線の場合で計23億円)ことに加え、電車によってはドア位置が異なるなどの技術的な問題も大きく、なかなか設置は進んでいなかったらしい。だが、不幸な事故を防ぐにはホームドアが最も効果的と、国交省は昨年以降、1日の利用客が5000人以上の駅には設置を促し始めた。

 利用客5000人以上の駅は全国で約2800。昨年1月の大臣会見で当時の大畠国交相は「現在までに5分の1弱しか設置が終わっていない」と述べているが、この発言には間違いがある(意識的なものではないと思うが)。確かに設置駅は519駅なので、2800駅に対する割合は20%弱(18.5%)だが、519駅の中には利用客が5000人未満の駅が結構含まれているのだ。例えば、福岡市営地下鉄の場合は35駅中、18駅(すべて箱崎・七隈線)までは5000人以下。福岡以外にも札幌、仙台など地方都市の地下鉄駅も519駅には含まれているので、実際の設置率はさらに低いことだろう。
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