貴重建築だった門衛所

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 九州大箱崎キャンパス(福岡市東区)の校舎群を近代建築物として評価する試みが行われた<注>。建築家や九大の研究者らが、各建築物の歴史・建築学・文化的価値と再活用のしやすさを計100点満点で評価したところ、1、2位は旧工学部本館(94点)、本部第一庁舎(92点)という九大のシンボル的建物が順当に占めたが、84点と評価され3位に入ったのは意外な建物だった。正門門衛所(写真上)。現代風に言えば、警備員の詰め所だ。レンガ造りの小さな建物(広さ34平方m)だが、見た目以上に貴重な建築物だったようだ。

 門衛所は1914年(大正3年)完成で、現存する九大の建築物の中では最も古い。今年で築98年。九大百年の歴史の大半を見守ってきたわけで、この点が高評価の一因なのだろう。ちなみに、上位に入った他の建築物の完成年は、旧工学部本館が1930年(昭和5年)、本部第一庁舎、評価第4位の保存図書館(83点)、5位の本部第三庁舎(81点)、6位の旧法文学部本館(80点)はすべて1925年(大正14年)。

 門衛所の設計者は不明らしいが、上に挙げた残る五つの建築物はすべて九州帝国大の初代建築課長だった倉田謙の設計と伝えられている。下の写真は順に、旧工学部本館、本部第一庁舎、保存図書館、本部第三庁舎、旧法文学部本館だが、塔屋を中心に左右対称のデザインであることが共通している。建築に関してはまったくの素人なので無責任な発言になるが、その視点で見ると、門衛所も“倉田様式”に見えなくもない。倉田が建築課長の職にあったのは1918年(大正7年)からだが、文部省技官として明治末年から九大の建築に携わっていたとされ、仮に門衛所の設計が倉田であっても時代的な不都合はないようだ。

 一人の建築家が手掛けた建築物がこれだけ集中して残っているのは極めて珍しい例らしく、その意味でも箱崎キャンパスの校舎群は貴重な文化財と言えるだろう。しかし、古い建築物である分、評価報告は各建築物の耐震性に懸念を示しており、旧法文学部本館に至っては「老朽化が著しいため、寿命に達している」とまで指摘している。個人的には極力多くの建築物を保存して欲しいと思うが、現実には極めて厳しいかもしれない。

 <注>九大と福岡市は今年3月から、「九州大学箱崎キャンパス跡地利用将来ビジョン検討委員会」を作り、九大移転後の箱崎キャンパス活用策を話し合っている。その参考とするため、キャンパス内に多数残る近代建築物の客観的評価を作業部会(6人)で行った。評価報告は福岡市公式サイトに掲載されている。


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コメント

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私は工学部本館に法文学部本館、応用化学教室の三つが特に好きなのですが、そのうち工学部本館以外は使用されておらず、廃墟の様相を呈しています。建築は数年放置するだけで老朽化が加速度的に進むとのことなので、現状のままではキャンパス移転完了後の保存は到底望めません。

近代建築の乏しい福岡市において箱崎キャンパスは貴重なスポットなので、移転後の計画は慎重にお願いしたいですね。

Re: タイトルなし

博多人様、まったく同感です。
耐震性の問題を別にしても、貴重な建築物群が果たして保存できるのか、非常に心配です。
箱崎キャンパスの広さは約42.6haですが、これは天神・大名地区に匹敵するそうです。
交通至便な土地にこれだけのスペースが生まれることに対し、経済状況が悪い中でも興味を示している企業等は多いようですが、建築物に対してはどのように考えているのか。
跡地利用優先ではなく、残すべきものを先にきちんと文化財指定し、そのうえで跡地利用を考えていくことも必要ではないかと思っています。