大名小校舎の報告書

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 ちょうど1年程前、歴史ある福岡市立大名小学校の校舎が取り壊される懸念があると書いた(「大名小学校の校舎」)。児童数減少に伴う統廃合により、この小学校は2014年3月限りで廃校になる。学校があるのは、市の中心・天神に隣接し、目抜き通りにも面した場所。校舎は1929年(昭和4年)に完成した堂々たる近代建築だが、立地条件や福岡という街の体質を考えれば、雲行きが怪しいと考えたのだ。

 1年前の記事の中では、市教委が校舎の歴史的価値を探る調査を行っており、2012年3月には報告書がまとまる予定とも書いた。ところが、この報告書が一向に公表される様子がなく、不思議に思っていた。役所が全ての情報を公開するとは夢にも思っていないが、報告書作成は酒井龍彦教育長が市議会の中で明言している。それなのに報道機関に発表するなど積極的に公表した形跡がない。市にとって不都合な中身だったので、公表を渋っているのではないかと疑ってもいた。

 昨年12月議会で、校舎保存を一貫して訴えてきた大名小学校卒業生でもある市議(与党の自民党所属)が報告書の内容を尋ね、教育長はようやく以下のように明らかにしている。

 「福岡市では九州大学の諸建築に次ぐ4番目の建築年代の古さを誇るなど希少価値は高いとされております。また、天神に隣接しながら天神とは異なる表情を見せる大名地区において、大名小学校の外観や階段、廊下回りの細部に残る昭和初期のデザイン、アールデコ様式が落ちついたまちの性格を際立たせているなど、文化財としての価値は高く、保存が望まれると報告されております」。

 この答弁を聞いて、質問した議員は「我が意を得たり」とばかりに喜び、高島宗一郎市長に保存の確約を迫っている。しかし、市長は「議員御紹介の取り組みも参考にしまして」などと議員の顔を立てながらも抽象的答弁に終始し、「保存する」との言質は一切与えなかった。この答弁から判断する限り、校舎を文化財として高く評価する報告書が出されてもなお、市は保存を決断していないのである。

 1年前にも紹介したが、大名小学校の敷地の一角には市立青年センターがあるが、市は「役割を終えた」との理由で廃止を決めた。利用者はむしろ増えているとの指摘があるのにである。一括して民間に売却するためではないか、という観測が議会サイドにはあるようだ。さすがの福岡市も報告書を無視して全面取り壊しに踏み切るとは思えないが、例えば、特に評価の高い玄関部分だけをモニュメントとして残し、残りは跡形もなく…という可能性もゼロではないと思う。
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