別府の疑惑


 温泉好きの私は別府という街が大好きである。最近は少しご無沙汰だが、以前は鉄輪や観海寺などに泊まったり、日帰りで駅前高等温泉や竹瓦温泉に行ったりするのを楽しみにしていた。その別府がどうも妙なことになっているようだ。福岡ではほとんど報じられていないが、暴力団組長らが虚偽の会社登記をした容疑で大分県警に逮捕されている。この会社は、別府など2市1町のゴミを焼却する藤ヶ谷清掃センターの運営を請け負っている。つまり公共事業に暴力団が潜り込み、資金源にした疑いが出ているのだ。しかも、この疑惑は2年前から指摘されていたのに、浜田博市長らは事実上頬かむりしていた形跡もある。捜査の進展次第では、湯の街は大揺れとなるかもしれない。

 清掃センターは、別府、杵築市と日出町が一部事務組合(組合トップの管理者は浜田市長)を作り、共同運営している。実際の焼却業務は三菱系の事業所が請け負ってきたが、この事業所に突然、労働組合が結成され、さらに組合員がこぞって退社し、2010年2月に新会社・別府環境エンジニアリング(以下、別府環境社と表記)を設立した。

 三菱系事業所は要員不足に陥り、業務継続は不可能になったという理由で、一部事務組合は委託相手を随意契約で別府環境社に切り替えた。この別府環境社こそが組長らが虚偽登記に関わった会社だ。暴力団組長らによる仕組まれた公共事業請負の乗っ取り劇だったことは明らかだろう。

 冒頭書いたように、この疑惑自体は2年前から持ち上がっていたのだが、追及していたのが市長選の対立候補と福岡の情報紙だった。選挙は大激戦となったが、現職の浜田市長が辛勝し、結果として選挙戦でのネガティブキャンペーンだったと市民に受け取られた節がある。

 別府環境社への業務委託に対しては市議会で批判の声も上がり、暴力団関与を問題にした議員もいるにはいる。だが、会議録を読んだ限りでは、単に「福岡の情報紙にこんな記事が書かれているが」というレベルの質問で、疑惑追及には程遠かったようだ。ただ、この議員は一つだけ戦果を挙げている。「実態を調べるべきではないか」と質し、執行部側から「しません」という答弁を引き出しているのだ。「します」ではない。「しません」である。別府市と一部事務組合は建前上は別だとは言え、行政自ら疑惑に蓋をしていたことは記憶されて然るべきだろう。

 組合から別府環境社に支払われていた委託費は年間1億6000万円。大分県内の民放ニュースサイトによると、警察はこの金の流れに関心を寄せているらしいが、市長選の対立候補らはもっと大きな金に絡む疑惑も指摘していた。藤ヶ谷清掃センターは建て替えが決まっており、新施設の建設、現施設の解体、及び新施設での運営(15年間)などを一括して行う事業者を選ぶ入札が2010年4月に行われ、日立造船系のグループが198億7000万円で落札している。組長らが本当に狙っていたのはこの利権である、と。

 もうひとつ気になる話がある。藤ヶ谷清掃センターでは3基ある焼却炉が2011年以降、断続的に故障して焼却が滞り、一時は1000tを超えるゴミが野積みされていたと報じられている。別府環境社の不手際だとばかり思っていたが、ひょっとしたらこれは意識的なサボタージュ、何らかの脅しだったのではないだろうか。別府市議会の会議録のほか、議員の議会報告、日立造船のニュースリリース、市長選対立候補のブログ、大分放送・テレビ大分の記事などを参考にした。写真は別府・鉄輪温泉街のいでゆ坂。浜田市長の後援会事務所がここにある。
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