不審火相次ぐ

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 福岡市東区、またはその近辺に放火犯がいる。地元の人にとっては周知の話だろうが、市消防局作製の放火マップ(消防局のサイトで公開されている)を見ると、同区では毎年のように連続放火事件が起きていることに気付く。2010年には香椎で6件、同年から11年にかけては松崎で計6件の不審火が続いた。この二つの事件の犯人は逮捕されたが、2011年11月14日、たった一晩で6件もの放火を繰り返したとみられる容疑者は依然、捕まっていない。少なくとも逮捕されたとの報道を見た記憶はない。今年に入っても香椎浜団地駐車場で不審火が相次いでいる。犯行時間は深夜から早朝にかけてが多い。周辺の方々はおちおち寝ていられないという心境だろう。

 東区で起きた放火件数は、2010年が19件(市全体で100件)、11年が27件(同99件)。同区の人口(市全体の約20%に当たる約30万人)を考慮すれば、とりわけ多い数ではないのかもしれないが、発生地域には特徴的な傾向がある。宇美川、多々良川を挟み、南側の箱崎や馬出などの地域では比較的少なく、北側の香椎、香椎浜、和白などの一帯で多発しているのだ。

 これが偶然なのか、何らかの理由があるのかはわからないが、香椎、松崎の連続放火犯には若干の共通点がある。香椎事件の犯人は30歳代、松崎事件は50歳代と年齢こそ異なるが、いずれも無職。二人とも深夜から未明にかけて、自宅周辺で自転車やバイクなどに放火しており、最後は自分の部屋に火を付け、現行犯逮捕されたことも共通している。愉快犯というより、自暴自棄、あるいは精神を病んでの犯行だったのではないだろうか(香椎事件の犯人には精神的な障害も考慮し執行猶予判決が出ている)。

 香椎事件に関しては、福岡大人文学部の大上渉准教授がプロファイリングを試みているが、かなり正確に犯人像を推定しており、非常に興味深い(『福岡市内で発生した連続放火事件における犯罪者プロファイリングの試み―報道情報に基づいた犯罪者プロファイリングの検討』)。連続放火犯の約88%は男性で、年齢層は30歳代が中心(平均年齢35.5歳)、そして無職が多い。また、自転車やバイクに火を付けるのは20歳代、ゴミや新聞の場合は40歳代が目立つという。当たる当たらないは別として、こういったデータを一つ一つ検討していけば、素人にも未解決事件の容疑者を推定する試みはできそうだ。

 また、放火が起きやすい地域特性はあるらしい。有馬隆文・九州大准教授らの研究グループが1998~2003年に市内で起きた925件の放火をもとに研究を行っているが、その結果をひとことで言えば、放火が起きやすいのは死角が多く、逃走ルートが確保しやすい街ということになる(『福岡市における放火地区の空間特性と誘発要因―都市犯罪の空間特性に関する基礎研究』)。あまりに大雑把に要約したので、当たり前すぎる結論になってしまったが、データ解析に加え、綿密な実地調査で導き出された放火が起きやすい地域の特性は非常に説得力がある。

 逆に放火が一切発生しないのは「計画的に作られた戸建住宅地である」という。具体名こそ挙げられていないが、東区のアイランドシティ(写真)や早良区百道浜などといった地域が当てはまるだろう。いわゆる高級住宅地ということになる。紹介した二つの論文はいずれもインターネット上で公開されている。
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