アルミ缶を守れ


 資源ごみ収集の日、福岡市では数年前までは野宿者がアルミ缶を回収していたものだが、最近では軽トラックに乗った者たちが根こそぎ持ち去っている。以前、この状況に不快感を示したことがあるが(「226人に減った福岡市のホームレス」)、多くの市民が同様の思いを抱いていたようだ。市に寄せられるアルミ缶持ち去りに対する苦情が一昨年頃から激増している。

 市の公表資料によると、苦情件数は2009年度は一けたに過ぎなかったのに、11年度は107件、12年度は191件と急増。今年度は8月末現在で138件に上っており、12年度を大きく上回るのは確実だ。苦情の中身は「見知らぬ者がごみ置き場にいて防犯上不安」「価値のない物は家の前に捨てていく」といったものから、「ごみ袋の購入費用に処理費が上乗せされているのに、市が処理しないのはおかしい」と市の無策を追及する意見もある。

 苦情急増は、福岡市民が急に偏狭になったというわけではなく、他人の住宅の敷地内にズカズカ侵入してくる軽トラ集団の行動が目に余るということだろう。現実に市が今年4月17日、持ち去りの実態を調べたところ、89件の持ち去りが確認されたが、その54件までは軽トラ集団だったという(残りは33件が自転車、2件が徒歩)。

 彼らが奪った資源ごみは、一部報道を信じれば、多くが中国に輸出されている。本来は日本国内でリサイクルされるべき資源ごみが中国に収奪され、これに関わる者たちが不当に利益を得ているわけだ。アルミ缶回収の主役が今も野宿者たちならば、市民の反発はここまで大きくなかったに違いない。

 福岡市はようやく最近になって資源ごみ持ち去り禁止条例の検討を始めたが、問題はいったん条例を制定すると、軽トラ集団だけでなく野宿者の持ち去りも規制されることだ。京都では2年前に同様の条例が制定されたが、「野宿者の糧を奪う」とかなり大規模な反対運動が展開された経緯がある。福岡市でも早くも一部で反対の動きが出ているが、市側は抗議した支援団体に対し「ホームレス支援は、条例とは別に検討していきたい」と答えたという。

 福岡市にはこの言葉通り、実効ある野宿者支援策を打ち出したうえで、早急に持ち去り禁止条例を制定し、そして厳格に運用してほしいと思う。そのためには京都をはじめすでに条例を制定した先進自治体を緻密に視察し、問題点や検討課題を洗い出すことが重要だろう。旧屋台条例のような、何一つ実効性のない代物では制定する意味がない。我々市民は中国のリサイクル産業を食わせるためにごみの分別をしているのではないのである。

 持ち去り禁止条例は県内で久留米、飯塚など4市町が制定済みで、再三の禁止命令に従わない場合、最高で20万円の罰金を科すといった内容だという。YouTubeに公開されている9月議会一般質問のやり取りを聞いた限りでは、福岡市でも同様の内容を検討しているように思える。他県の例では、熊本市の場合は悪質な違反者を警察に告発しており、実際に複数の逮捕者が出ているようだ。

 なお、アルミ缶の買い取り価格は変動が激しく、地域によっても差があるようだが、北九州市若松区の業者がホームページで公表している数字を例に取ると、1kgで90円。350ml缶の重さが15g程度らしいので、1kgを集めるには67個程が必要。1000円を稼ぐには700個以上の空き缶を集めなければならない。自転車や徒歩で回っている野宿者たちがどれだけの収入を得ているものか、その厳しさが何となく想像できる数字だ。
関連記事
スポンサーサイト
[Edit]