同僚に発砲した泥棒警官

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 大分県別府市で1962年、派出所の巡査が殺害され、拳銃や制服、警察手帳を奪われる事件が起きている。今回の本題はこの巡査殺害事件ではないのだが、事件を知って、警官が拳銃を奪われた例が過去にどのぐらいあるのかを調べ始めたところ、64年に福岡市で起きた非常に特殊な事件に出くわした。泥棒がパトロール中の警官から拳銃を奪い発砲したというものだが、何が特殊なのかというと、この泥棒も現職の警官だったのだ。しかも同じ署の勤務。警官の不祥事は今も昔も様々起きているが、これは相当珍しいケースだと思う。

 事件が起きたのは1964年10月15日未明。現在の福岡市中央区大手門付近をパトカーで巡回中だった20歳代の若い警官2人が、ジャンパー姿の不審人物を発見した。職務質問をしようとしたところ、男は逃走を図り、警官たちともみあいになった。男はすきを見て一人の警官から拳銃を奪い相次いで発砲、一人の警官は手首に傷を負い、もう一人は腹部に銃弾を受けた。しかし、腹部を撃たれた警官はひるまずに拳銃を奪い返し、2人はたまたま通りかかったタクシー運転手の協力を得て男を取り押さえたという。

 捕まった男というのが二人の警官にとっては先輩に当たる当時39歳の巡査で、しかも二人とは同じ警察署管内の派出所勤務。警察拳銃の取り扱いにも慣れていたはずだ。この3人に面識があったかどうかは私が読んだ新聞記事には書かれていなかったが、同じ署の外勤警官同士なのだから顔見知りであっても不思議はない。若い2人は「まさか先輩が」と驚がくしたからこそ、拳銃を奪われるようなすきが生まれたのではないだろうか。

 この事件前、大手門一帯では深夜の事業所に侵入し金品を奪う空き巣ねらいが続発していた。捕らえた巡査が持っていたカバンには、ドライバーや懐中電灯、金ノコなど明らかな七つ道具が入っていたという。まさに空き巣に入ろうとした直前、職質を受けたわけで、破滅的な抵抗はそのためだろう。最初は住宅ローンが苦しく空き巣に手を出したが、事件当時はスリルを味わいたくて犯行を繰り返していたという。根っから警官には向かない人間だったのだろう。

 この不祥事の責任を取り、当時の福岡署長は辞任している。腹部を撃たれた警官は重傷を負ったが、一命を取り留めた。定年まで職務を全うし、かなり出世もされたようだ。数年前の危険業務従事者叙勲の受賞者名簿にこの警官の名前があった。

 写真は現在の大手門界隈。この事件を調べるきっかけとなった別府の派出所巡査殺害事件については機会があったら書きたい。

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