ツシマヤマネコ飼育15年

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 国の天然記念物ツシマヤマネコを15年も自宅で飼育していた対馬の男性に関するニュースが25日の各紙朝刊に載っていた。天然記念物を無許可で飼育するのは種の保存法違反であり、環境省は男性に厳重注意したのだが、一方で同省は飼育期間が15年にも及んだことに興味津々らしい。動物園での飼育期間は平均で10年程度で、男性が飼っていたヤマネコは1・5倍も長生きだったことになるからだ。

 男性が飼っていたのは交通事故でけがをしたメスで、保護した15年前、対馬には獣医がいなかったため、わざわざ福岡市まで出向いて治療を受けさせたという。そのまま自宅で飼うに至った事情はどの新聞にも書かれていなかったが、恐らく自然界に返しても生存は厳しいと考えたのではないだろうか。

 最近、このネコの具合が悪くなり、男性は対馬にある環境省の野生生物保護センター(野生生物と名乗ってはいるが、事実上ツシマヤマネコの専門施設)に持ち込み、ここで違法飼育が明るみに出た。ネコは結局助からなかったが、死因は老衰だったらしい。つまり天寿を全うしての大往生だ。本来ならば100万円単位の罰金を科すケースだというが、以上のような事情なので、環境省も形だけ叱ったことにしたのだろう。

 ツシマヤマネコは、福岡市動物園でも繁殖のため飼育されている。このニュースを読んだ後、せっかくだから見に行こうと思ったのだが、公式サイトで確認したところ、繁殖に専念させるため今月23日から展示を中止したという。同動物園ではこれまでツシマヤマネコの子供26頭が育っているが、2009年6月以降は出産が止まっているらしい。国産のトキの時もそうだったが、個体数があまりに少なくなると、子供を作ること自体が極めて難しくなる。福岡市動物園の展示中止を見ると、ツシマヤマネコの種の保存に関し、環境省は今までにない危機感を持っているのではないだろうか。

 これまで飼育下で最も長生きだったツシマヤマネコは、福岡市動物園で今年6月に老衰死した「ジョージ」で16年(捕獲当時は2歳ぐらいだったので、推定年齢は18歳以上)。自宅飼育の15年は、これに次ぐ記録のようだ。

 なお、一般の飼い猫の寿命は東京農工大が2004年、全国のペット病院にアンケートして調べたところ、平均で9・9歳。ワクチン接種が普及し感染症で死ぬネコが減ったため、1992年の調査と比べれば、寿命は倍近くに伸びているという。それでも10年に満たない。飼い猫とは単純比較できないかもしれないが、15年という数字に、保護されたツシマヤマネコがいかに大事にされていたかが良くわかる。ただ、種の存続が危ぶまれる状況だけに、このネコが母親になる機会を失ったことは残念だった。

 写真のツシマヤマネコは「福馬」というオスで、対馬の野生生物保護センターのダウンロードサイトから写真をお借りした。福岡で生まれ、対馬で育ったことが名前の由来だという。
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