福岡市にもいるアライグマ

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 福岡市の公式サイトにある報道発表資料によると、市内5地区でアライグマの生息が確認されたという。すでに47都道府県すべてで野生化した個体が確認されているらしいから、今さら福岡市で見つかったからと言って別に驚く話ではない。しかし、あのアライグマが福岡市の野山や場合によっては市街地を闊歩しているかと思うと、やはり不思議な気分になる。

 生息が確認されたのは博多区金隈、南区柏原、早良区板屋、同椎原、西区金武。これは偶然に目撃されたというわけではなく、東区香椎、早良区野河内、西区桑原を加えた計8地区で調査したところ、5地区では赤外線センサーカメラでの撮影に成功したり、足跡などの痕跡が見つかったりしたということらしい。だから、5地区以外には生息していないというわけではなく、調査が行われていないだけだ。

 北米原産のアライグマが日本で野生化したのは、ペットとして大量に輸入されたが、これが逃げ出したり、手に余った飼い主が捨てたりしたためだと言われている。見掛けは可愛いが、実はかなり狂暴な性格。しかも個体によっては体重10kg超と想像以上に大きくなる。そもそもペットに適さない動物なのだが、例のアニメ『あらいぐまラスカル』が1977年に放映されて以降、人気が沸騰。2005年に特定外来生物に指定され輸入・飼育等が禁止されるまで、最盛期には年間2,000頭、少ない時期でも500頭前後が輸入されてきたという。だから、ペットが野生化したのは間違いない事実なのだろうが、個人的には少し不思議に思っていた。私の周囲、あるいは見聞きした範囲でアライグマを飼っている家庭など一軒もなかったからだ。

 この疑問は環境省発行の『アライグマ防除の手引き』を読み、何となくだが氷解した。冒頭書いたように現在では47都道府県すべてで生息が確認されているが、2006年段階で生息が集中していたのは北海道のほか、意外なことに首都圏と京阪神だったのだ。北海道の場合は自然条件が原産地の北米に似ているためではないかと想像されるが、首都圏、京阪神については恐らく、ペットとして飼育する家庭がそれだけ多かったということではないだろうか。

 1970年代のアライグマの販売価格は調べがつかなかったが、輸入が禁止される直前は1頭数万円から10万円前後でペットショップに並んでいたらしい。思った程高くはないが、かと言って簡単に買える値段でもない。2006年段階でアライグマの分布地域が少なかったのは東北、北信越、中国、四国、そして九州だ。自然条件は恵まれた地域だが、アライグマを飼おうという経済的余裕のある家庭の絶対数が首都圏や京阪神よりも少なかったということだろう。

 個人的な経験で恐縮だが、私は小学生時代に一度だけ犬を飼ったことがある。と言ってもペットショップで買ったわけではなく、少し可愛らしい顔をしていた野良犬を連れ帰り、そのまま飼っていたのだ。しかも子犬ではなく、結構な大きさの成犬だった。私の子供時代は相当な数の野良犬が街中をうろついていたのである。成犬を捕えてくるなど、今考えるとアバウト過ぎるというか、危険極まりないことをしていたと思うが、そんな育ちの人間からすると、アライグマなどをペットとして飼うことができたのは、やはり都会の裕福な家庭だったのではないかと想像される。

 福岡市ではまだ、深刻な農業被害は出ていないというが、『アライグマ防除の手引き』によると、対策が後手に回ると、防除が分布拡大に追い付かず、被害拡大を招いてしまうという。だから、早急に徹底的に駆除せよというのが環境省の結論だ。国内固有の生態系を壊したり、寄生虫を媒介したりするというから仕方のないこともかもしれないが、勝手に悪者にされ、大量殺戮される外来生物たちはやはり哀れだと思う。環境省は次にミシシッピアカミミガメの特定外来生物指定を考えているという。事実だとしたら、やがて空前絶後の規模で駆除が行われることになる。

 アライグマの写真は、無料で使える動物写真のサイト「動物あ・ら・ら」からお借りした。
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