辻堂口門

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 福岡市博多区の承天寺そばに先月下旬完成した「辻堂口門(つじのどうぐちもん)」を遅ればせながら見学してきた。愛称は「博多千年門」。JR博多駅側からこの門をくぐれば、承天寺をはじめ数多くの寺が並ぶ一帯だ。全国的にはあまり知られていないと思うが、古代から大陸への窓口だった博多には格式の高い古寺が多い。市による辻堂口門建設と、併せて行われた「承天寺通り」の整備は、これらの古刹群を観光資源にしようという狙いがある。

 門は木造で、高さ、幅ともに8m。辻堂口門とは江戸時代、やはり承天寺のそばにあった門の名前で、これをそっくり引き継いだ。辻堂は承天寺がある一帯の旧地名。江戸時代の門は、1821年(文政4年)完成の地誌『筑前名所図会』に「博多 東の郭門」として描かれており、辻堂の入り口というだけでなく、博多の玄関口の一つだったことがわかる。ここから大宰府に通じる道が延びていたという。

 門の建設は、福岡市が2012年度の新規事業の一つとして大々的にアピールしており、市単独の事業だと思っていたが、傍らにあった説明板によると、もともとは地元から出されたアイデアだったらしい。承天寺境内を分断する承天寺通りの景観整備などについて意見を出し合う中で、新たな博多のシンボルとして辻堂口門再建が提案され、これに「歴史的文化資産の活用による観光振興」を目論んでいた福岡市が乗っかったということのようだ。建設費8800万円のうち、1300万円は地元などからの協賛金で賄われたという。

 私は数年前から博多の古い街を歩くようになった。ブランクを挟みながらも長く福岡市に住んでいるのだが、狭義の意味での「博多」(福岡市のうち、那珂川と石堂川に挟まれた狭い区域)にはあまり縁がなかったため、この年になっても驚きと感動がある。古い遺産をあまり大事にしてこなかった福岡市だが、承天寺や聖福寺、東長寺などの大寺が並ぶ一帯は同じ市内とは思えないほど歴史的景観が残り、この街並みを灯明やライトアップで彩る「博多灯明ウォッチング」「博多千年煌夜」といった催しは毎年でも行く価値があると思う。

 誕生したばかりの辻堂口門は、今はまだ真新しすぎて唐突な感じがしないでもないが、時を経れば、この景観の中に溶け込んでいくのではないだろうか。また、車道を川、歩道を川岸の遊歩道に見立てて整備したという新しい承天寺通りは落ち着いた雰囲気で、地元民の評判も上々らしい。ただ、私が見学に行った5日は冷たい雨が降っていたためもあるだろうが、土曜の午後の早い時間帯だったというのに観光客らしき人は全く見掛けなかった。門を作り、道路を整備したからと言って一気に観光客が増えるはずはないとは思うが、少し残念だった。(下の写真は承天寺)


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