平和ぼけしたクマゼミ

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 先日の夕方、日課の散歩をしていた際、猫が街路樹につかまり立ちして何かをじっと見つめている光景に出会った。何事だろうと街路樹に目を向けると、猫の視線の先にクマゼミが止まっていた。地上からの高さはせいぜい1㍍程の場所。ずいぶん無防備なセミだと呆れたが、最近は低い場所に止まり、しかも人間に対してほとんど警戒心を持たないクマゼミを見かけることが多くなった。2枚のクマゼミの写真は、いずれもスマホで撮影したものだが、かなり近付いて写したにもかかわらず、どのセミも一向に逃げる気配がなかった。試しに何度か手づかみで捕らえてみたが、成功率はほぼ100%だった。

 ネット上には似たような体験を語っている人が少なからずおられるが、私がセミ捕りに明け暮れていた小学3、4年生の頃、クマゼミとはこんな平和ぼけしたような生き物では決してなかった。4年前の記事「福岡のセミはミンミンと鳴かない」でも書いたが、当時はニイニイゼミやアブラゼミに比べてクマゼミは希少な存在で、しかも彼らがワシワシ鳴いているのはおおむね木のてっぺん近くだった。短い捕虫網では捕えられるはずもなく、クマゼミ捕りの必需品は先端にとりもちを付けた長い竹竿だった。

 出来る限り木に登ったうえで、そこから思い切り竹竿を伸ばしてクマゼミを狙ったものだが、あっという間に逃げられるのが常。運良く捕らえることが出来ても羽にとりもちがべったり付き、引きはがす際に羽が破れたものだった。

 考えてみれば、セミはカブトムシやクワガタのように飼育を楽しめる昆虫ではなく、私自身も昆虫採集の標本作りといった高級な趣味を持っていたわけではない。なぜ、あれほどセミ捕りに熱中していたのか今となっては謎だ。私が中高年となってようやく到達した境地に、現代の忙しい子供たちはすでに達しているのだろう。今ではセミ捕りをしている子供など滅多に見ることはなく、クマゼミたちは代を重ねるに従い人間への警戒心を薄れさせていったのではないだろうか。

 最近、地元紙・西日本新聞夕刊に掲載されている電話投稿コーナー「テレホンプラザ」で、なぜ、近年クマゼミが増えたかについて議論が交わされていた。近年の都市の温暖化が南方系のクマゼミにとって幸いしたというのが定説らしいが、テレホンプラザでは「都市化で土が固められ、幼虫の掘る力が強いクマゼミだけが環境に適応した」「他のセミに比べ飛翔力の強いクマゼミが鳥から逃れられる可能性が高い」といった意見が出され、なかなか面白かった。さらに興味深かったのは、クマゼミについて熱く語っているのはすべてが60、70歳代の方々だったという点だ。もちろん、これは新聞を読んでいるのが中高年世代が大半ということも影響しているのだろうが…。

 クマゼミたちは今も午前中は「ワシワシ、ワシワシ」と騒がしい限りだが、14日夕、福岡城址ではツクツクボウシが物寂しげに鳴いていた。盆を過ぎると、あっという間に夏休みの終わりがやって来る。

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