プリンス・ウィレム焼失

旧聞に属する話2010-プリンス・ウィレム

 マスコミやお役所が今年の10大ニュースを選定する季節になった。10大ニュースという程ではないが、個人的にショッキングな話題として記憶に残っているひとつに、プリンス・ウィレム号(の複製)焼失がある。7月30日にオランダ北部の都市であった出来事だ。

 プリンス・ウィレムとは、17世紀にオランダ・東インド会社で貿易船として活躍した帆船だ。当時としては最大級の帆船だったらしい。この船の忠実な複製が1985年、オランダで建造され、ハウステンボスの前身・長崎オランダ村にやってきた。優美な姿は、オランダ村のシンボルとして長く人気を集めていた。

 オランダ村の末期の2001年、係留されていたこの帆船内を見学したことがある。写真はこの時に撮影したものだ。17世紀には最大級だったとはいえ、現在では、サイズにしても居住空間の快適さにしても、長距離フェリー以下だ(焼失を伝えた共同通信の記事によると、船の大きさは全長73.65m、約2000t)。これでオランダからインドネシアまで航海していたかと思うと、当時の海の男たちの勇気と苦労に本当に頭下がる思いだった。

 このプリンス・ウィレムがオランダ村を離れ、古里オランダに戻ったのは2003年10月のこと。ハウステンボスの経営破綻で、債務返済のため売却されたのだった。関係者に見送られ、静かに出航する姿をテレビ報道で見たが、オランダ村、ハウステンボスの落日を見るようで、非常な寂しさを感じたのを覚えている。

 火災の原因は、電気系統のショートだったという。オランダでの第二の生活は6年弱に過ぎなかったが、母国でも日本と同様に人気を集め、観光客誘致に一役買っていたとも共同電は伝えている。

 本物のプリンス・ウィレムは1651年に処女航海を行い、62年には嵐のため一生を終えた。複製のウィレム号も(本物より長いとはいえ)24年の短い生涯だったが、日本だけでなく故国オランダでも人々に愛されていたと聞き、救われる思いだった。
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