立花山のクス原生林

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 福岡市東区の立花山(標高367㍍)に登り、クスの巨木を見てきた。山頂付近の斜面には多数のクスが自生しており、その数は全山で数千本、樹齢300年と推定される巨木だけでも約600本を数え、1955年にはクス原生林の北限として国の特別天然記念物にも指定されている。一方で、原生林の割には若木がなく、一部の木は規則正しく並んでいるなどの理由から、福岡藩の植林によって生まれた森だという意見もある。

 自然林、人工林のどちらにしろ貴重な森であるのは間違いないと思うが、仮に人工林であった場合、どのような目的でつくられた森なのだろうか。クスで思い浮かぶのは防虫剤やセルロイドの原料などとなる樟脳で、江戸時代、南蛮貿易での主要輸出品の一つだったという。クスとは“金の成る木”だったわけで、「福岡藩が樟脳製造を目的にクスを植樹した」という筋書きを考えたが、残念ながら福岡藩で樟脳製造が盛んだったという話は出てこなかった。

 むしろ出てくるのは福岡藩がクス林を大切に保護していたという話で、「立花山の樟林は、全国稀に見る所にして、旧藩時代に保護を加えたる由れば、其生育殊に宜しく(中略)、林業家の嘆賞する所なり」(『福博誌』伊東尾四郎、森岡書店、1902)という一文を読めば 目先の利益ではなく、危急の際の資産としてクス林の保護を図っていたようにも思える。なお、南蛮貿易で輸出された樟脳のほとんどは薩摩産だったという。

 昭和初期の資料には「前城口の入口の谷間にクスの落葉を集め樟脳を製取する小屋あり」(『天然紀念物及名勝調査報告 植物之部 第8輯』史蹟名勝天然紀念物保存協会編、刀江書院、1928)とあり、立花山で一時期、樟脳製造が行われていたことは間違いないようだ。だが、チップではなく落ち葉で作ったというぐらいだから、非常に細々とした規模だったのだろう。

 立花山は、黒田家の筑前転封までは立花城という山城があったことで知られ、歴史にも彩られた山だ。城の本丸があった山頂からの眺めも良く、低山ながら登山客の人気は高い。ルートは色々あるが、私の場合、福岡市立三日月山霊園(福岡市東区香椎)の駐車場に車を停め、駐車場内にある三日月山(標高272㍍)登山口から隣の立花山まで縦走するルートを取ることが多い。私自身は利用したことはないが、立花山・三日月山の登山客の中には、東部余熱利用センター(東区蒲田5)の大浴場で汗を流して帰る人も多かったという。この施設が惜しまれながら3月末で閉鎖されたことを以前紹介した(「消え行くホークスタウン」)。




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