「盆花」ヒゴタイ

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 大分県九重町の長者原でヒゴタイが見頃を迎えている。瑠璃色の球形の花を咲かせるキク科の多年草で、くじゅう・阿蘇地域を代表する野の花だ。大陸と日本列島が地続きだった頃から生き延びてきたというが、今では絶滅寸前の状態。九州本土で自生しているのはこの地域ぐらいだが、宮崎の親族によると、半世紀ほど前までは宮崎県内の山間部でも見ることができたという。

 数年前、この親族らを連れて長者原・タデ原湿原を散策した際、くじゅうには初めて来たという親族が「こりゃ盆花じゃないか」と懐かしそうに声を上げた。話を聞いたところ、昔はお盆の時期、ヒゴタイを摘んできて墓前に供えていたので盆花と呼んでいたという。同様の風習はくじゅう・阿蘇地域にもあり、やはりヒゴタイの別名は盆花だったらしい。かつては九州に広く自生していたといわれるだけに、多くの山間の地域でヒゴタイは先祖を供養する花として重宝されていたのだろう。

 絶滅寸前の状態にまで追い込まれた原因は、開発により生息地域が狭められたことと乱獲だと言われている。地元民が大切に摘んできた花を、自生地の野山が観光地化されたことで観光客や業者らが大量に採取していくようになり、くじゅう・阿蘇地域では一時期、花を切り取られたヒゴタイの無残な姿が晩夏から初秋にかけての風物詩ともなっていたという。

 最近は長者原に行くたびにヒゴタイの数が年々増えているように思え、生息域を拡大しているのではないかと思っていたが、例によって浅はかな考えだった。地元の保護団体が種をまくなど懸命の保護活動を続けており、これによって辛うじて生息地が守られているというのが正解のようだ。環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に位置づけられている状況に変化はない。

 3年前、ヒゴタイの苗を長者原で買い求め、自宅ベランダのフラワーポットで育てたことがある。園芸サイトに酸性土壌や高温多湿を嫌うと書かれていたので、土には苦土石灰を混ぜ、水のやり過ぎには注意するなどかなり慎重に育てたつもりだったが、残念ながら枯らしてしまい瑠璃色の花を目にすることはできなかった。その後、フラワーポットから植物が芽を出し、ヒゴタイが復活したのではないかと喜んでいたが、正体は小さなスミレだった。苗の土に種が混入していたのだろう。正確な種類は特定できなかったが、花は薄い紫色だった。
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