大赤字の福岡空港

旧聞に属する話2010-福岡空港

 人を見送りに福岡空港へ行き、何十年ぶりかで送迎デッキに上った。昔の旅客機は騒音がひどく、送迎デッキなど長くいる場所ではなかった。学生時代、この空港に比較的近い場所に住んでいたが、飛行機が上空を通るたびに耳をつんざくような爆音が鳴り響き、テレビの映像も乱れた。卒業後、まったく別の土地で就職したが、騒音のない生活が何よりうれしかったものだ。当時に比べれば、現在の旅客機は実に静かになった。

 この福岡空港、毎年のようにニュースになるのだが、国管理の空港の中で赤字額が最も大きく、その額は先ごろ発表された2007年度収支では実に57億円にも上っている。年間約1600万人もの利用者がありながら、なぜ、このような事態になるのかというと、これも最近は有名になってきたが、空港敷地のかなりの割合を民有地が占めており、地主に対して毎年、莫大な地代(2007年度は84億円)が支払われているからだ。これさえなければ、赤字どころか、逆に数十億円の黒字を計上している計算になる。

 どうしてこのような状況を放置しているのか? 現在、地主らに対しても批判の目が向けられているようだが、根本的には、この国ならではの近視眼的な政策と、国民、中でも農民を甘く見たことが大きな原因ではないかと思う。1988年に発行された『福岡市史』第8巻に、そのあたりの記述がある。

 この空港用地はもともと優良農地だったらしいのだが、戦時中に旧日本軍が半強制的に収用して飛行場を建設。終戦でいったん返還されたものの、直後に米軍に接収されたという経緯がある。国が本格的に土地の買収を始めたのは1956年からだったが、これが極めて難航したという。その理由というのが、『福岡市史』の記述によると、「国による民有地の買収価格と、周辺地の売買実例との格差が大きく、また賃貸料も安いことが障害となっているもので…」。要するに、国側は相場よりも安い価格で買いたたこうとしていたのだ。

 土地を奪われた農家は当時、経営難に陥っていたとされる。だから、安い価格でも手放すと踏んだのかもしれないが、この時点で地主に対して誠意ある対応を見せ、せめて周辺相場並みの価格でも提示していたならば、福岡空港の収支の現状はもう少し変わっていたのではないかと思う。

 2800mの滑走路が一本しかない同空港は、容量限界が近付いているとの指摘もあり、新空港建設を含めた機能拡張策が検討された。結局はコストの問題もあり、現空港を拡張して2本目の滑走路を新設する構想が本命となったが、新空港論者とされた麻生知事はこの結論に極めて不満だったようだ。

 新空港建設について、「バカな九州経済界が無駄な公共事業でぼろ儲けを狙っている」と批判する東京の論者もいたが、そんなに単純なことではない。市街地にある福岡空港は、交通アクセスの良さという点では世界でも有数と言われるが、裏を返せば、危険と隣り合わせでもあり、スペース的にもまったく余裕がない。加えて、借地料に代表される高コスト構造。別に麻生知事を支持するわけではないが、こういった諸々の問題以上に、目先のコストだけで機能拡張論議が左右されたことに、知事は我慢ならなかったのではないか。

 現在、九州地方整備局が滑走路増設計画についての市民意見を募集している。せめてこの機会に民有地買収を本気で進め、永遠に大赤字が続くような構造だけは解消するべきではないかと思う。
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