800万匹のアカミミガメ

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 今年の初夏だったか、少し信じ難い光景を目撃した。福岡市早良区の福岡市博物館の前庭に人工池があるのだが、ここを大きなミシシッピアカミミガメが泳いでいたのだ。池といってもタイル張りで水深も浅く、餌になるものなど一切ない。恐らく捨てられたのだろう。数日後には姿を消していたが、どう考えても生きて行けそうにない場所に平気でカメを遺棄する神経が理解できなかった。

 「放生会」の中で少し触れたが、このアカミミガメについて、環境省は生態系や農作物に被害を及ぼしているとして特定外来生物指定を検討してきた。だが、昨年、見送りを決めた。全国で約180万匹が飼育されていると試算される中、指定により個人の飼育まで規制すれば、「野外への大量の遺棄」を招く恐れがあるというのが理由だった。実はこれ以外に「エッ!」と驚くような理由を同省は挙げている。それは「野外での繁殖確認事例が少ない」というものだ。

 アカミミガメが生態系の悪者扱いされてきた理由の一つは、旺盛な繁殖力で、我が国の固有種・ニホンイシガメを駆逐しているというものだったと思う。それなのに「野外での繁殖確認事例が少ない」では、ずいぶん話が違う。ただ、環境省は今年4月になって国内に生息するアカミミガメが800万匹に上り、イシガメの8倍にもなるとの推定結果を公表している。まさか、このすべてが捨てられたカメだと考えているわけではないだろう。繁殖一つとっても、これだけ矛盾する話が同じ環境省から出てくるのだから、アカミミガメの国内での生態は意外にわかっていないのではないかと思う。

 福岡市中央区にある舞鶴公園のお堀に限っての話だが、ここに生息しているアカミミガメは繁殖していないのではないかと考え、記事を書いたことがある(
「カメは繁殖していない」「消えたアカミミガメ」)。別に科学的裏付けがあるわけではなく、非常に単純な話だ。お堀で見掛けるのは大きなカメたちばかり。春から初夏にかけては生まれたばかりの子亀を目撃することが稀にあるが、これが育っているのならば、常時、様々なサイズのカメを見掛けるはずだ。ところが、そうではない。ここでは子亀が孵化しても育つことはできない、つまり本当の意味での繁殖は行われていないと思ったのだ。

 子亀が育たない理由はわからない。カラスやアオサギに捕食されているためではないかとも考えたが、生き延びる個体もいるはずなので、お堀の環境がカメの成長、または生存に適していないのかもしれない。

 過去にも取り上げたことがあるが、舞鶴公園のお堀のうち、一番西側にある5号堀ではハスの再生実験が続いている。簡単に言えば、堀の中に設けた囲いの内外でハスの生育状況を比べ、ハス激減がカメの食害によるものかどうかを確かめるというものだが、実験主体の福岡市は昨年、「やはりカメが犯人でした」と結果を公表している。それなのに、なぜ今も実験が続いているのか疑問だが、一種のデモンストレーションではないだろうか。囲いの中ではハスが繁茂し、外では全く育っていないという状況はアカミミガメの悪者ぶりを喧伝するのに絶好だからだ。看板に太字で書かれた「ハス再生のため、ご理解とご協力をお願いします」という一文が意味不明だが、これは恐らく、お堀からカメを根絶することへの理解と協力を求めているのだろう。

 駆除の総本山、環境省も今後、国内への輸入を禁じるとともに、現在、家庭で飼われている個体は終生飼い続けるように求め、さらには捨てられ野生化した個体の駆除を行っていく方針らしい。つまり、可能かどうか別にして800万匹の駆除が今後行われることになる。かつては毎年100万匹のアカミミガメが輸入され、激減した現在でも10万匹に上ると言われる。もっと早く輸入規制を行っていさえすれば、こんな大量殺戮の必要はなかっただろうにと思う。
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