呪われた七隈線

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 福岡市のJR博多駅前で起きた大陥没事故は、市の醜態をまたも全国にさらしてしまったが、幸いなことに昼夜兼行の埋め戻し作業により14日にも復旧の予定だ。陥没原因は市営地下鉄七隈線の延伸工事だが、この路線はただでさえ毎年巨額の赤字を垂れ流している。延伸工事は利便性アップにより採算を上げようという目論見なのだが、その工事でこんな情けない事態を引き起こすのだから、呪われたような路線だ。復旧費用や損害賠償の総額も恐らく巨額に上ることだろう。

 七隈線は「福岡市西南部の渋滞解消」を目的に2005年2月に開業した。福岡市営地下鉄3番目の路線で、車両基地のある西区橋本と天神南12㌔を結んでいる。開業前、市は一日の利用客を11万人と見込んでいたが、ふたを開けてみれば、わずか4万人あまり。開業初年度の赤字は67億円にも上り、一日の利用客が7万人あまりに増えた今でも毎年30億円以上の赤字を出し続けている。累積赤字は500億円を超えるらしい。

 この路線の大不振の理由は一般的に、地下鉄の主力路線・空港線との乗り継ぎが不便なためだと言われている。両路線とも市の中心・天神に乗り入れてはいるが、空港線天神と七隈線天神南との間は地下街を通って700㍍もあり、確かにその通りなのだろう。

 ただ、私はもう一つ大きな理由があると思う。延長12㌔の路線なのに、駅数は実に16で、駅間距離はたった800㍍。発車したと思ったら、すぐ次の駅に止まるという繰り返しで、鉄道としてあるべきスピード感がまったくなく、非常にストレスを感じる乗り心地なのだ。まして七隈線の建設工事のため沿線道路の多くは拡幅整備され、「福岡市西南部の渋滞解消」という目的は、皮肉にもこの道路整備によってある程度達成されている。路面電車や路線バス並みに止まってばかりの地下鉄を嫌い、マイカー利用を続ける市民も恐らく多いことだろう。

 問題の延伸工事は、キャナルシティ博多という大型商業施設を経由してJR博多駅に直結させるのが目的で、距離にして1.4㌔。2020年度の開業が予定されていた。事業費は450億円にも上るが、福岡市はこの延伸によって利用客が2万人程度増え、延伸開業から6年後には黒字転換、12年後には累積赤字も一掃できると見込んでいた。しかし、これだけの事故を引き起こしたのだから、開業スケジュールに影響が出るのは必至。収支計画の見直しも避けられないことだろう。

 蛇足だが、東京のキー局などは陥没事故が起きた市道・はかた駅前通りを「福岡のメインストリート」などとセンセーショナルに報道していたが、そう思っている市民はほとんどいないと思う。市内を我が物顔で走り回る西鉄バスの路線が、あの通りにはほとんどない。メインストリートではない何よりの証拠だ。


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コメント

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福岡の地下には川が流れている

この事故が発生してから全国的に報道され、『地下空間の専門家』と称する人が世間の不安を書きたてるようなコメントを発する中、駄田泉氏の冷静な本件の取り上げ方、まさしく我が意を得た思いです。
 私は土木技術者のはしくれとして旧県庁前から中洲川端駅までの地下鉄の建設に従事しましたが、地下15mくらいまでは水が多量にある地層である事は常識でした。 従い、その下に位置する地下鉄路線は以下に水の浸入を防いで工事するかが技術者の腕の見せ所でした。 
 今回の陥没の真の原因は『地下空洞』ではなく地下空間掘削の工法が不適切だったのではと感じます。 採用されたNATOM工法は地下空間をモルタルを吹き付け崩落と地下水侵入を防ぐ工法ですが、福岡のように地下水が豊富なところでは不適切だったかもしれません。 時間と費用が掛かりますがパイプルーフ工法が最も安全/確実な工法ですが、その場合費用対効果の面から七隈線延伸の要否まで検討する必要ありますね。

Re: 福岡の地下には川が流れている

 コメントありがとうございます。
 おっしゃる通り、費用等の問題でナトム工法を選んだ節がありますが、あの軟弱な地盤で適切だったのかが検証の肝になるかと思います。
 事故発生時にツイッターでは取り上げたのですが、工事請負契約締結時の市の資料には、陥没現場について「掘進時の急激な地質の変化や地下水の低下による地表面沈下が懸念される」という文言があり、ある意味想定できた事故であり、それを防ぐはずの対策は取られていたと思いますが。

最初のコメント者で、福岡に地下水が豊富とか風評被害になるからやめてもらえますか?
現在新横浜駅で大量に水が出てる横浜市よりは遥かにマシでしょ?
そもそも福岡は水不足って聞いたことあるし。

Re: タイトルなし

JR博多駅の地下に地下鉄空港線が通っています。駅ビル建て替えの際、旧駅ビルを取り壊すと、大量の地下水によって地下鉄が浮き上がり兼ねないため対策が取られたそうです。海に面した福岡の地下水位が高いのは間違いないようです。