義務的経費が膨らむ福岡市予算

 福岡市の2017年度一般会計予算案についての予測記事が先日、複数の新聞に掲載されていた。中身はほぼ共通しており、総額は8300~8400億円規模で、今年度の7845億円を大きく上回り、過去最大になる見通しだという。ずいぶん景気のいい書き出しだが、読み進めていくと非常に怪しくなる。主要財源の市税の増収はわずか20億円程度。一方で、義務的経費は今年度当初の3838億円から4450~4500億円まで増大するという。つまり予算規模が膨れ上がるのは、ただ単に経費が600億円以上も増えるからで、これは決して景気のいい話ではない。

 義務的経費が一気に16~17%も増えるなど尋常ではないと思うが、その理由や財源をどう賄うかなどについての説明はどの新聞にも一切なかった。仕方がないので自分で調べたところ、あっさりわかった。市立小中学校教職員の人件費がこの春から、道府県から政令市の負担へと切り替わり、これにより政令市の人件費が増大するためだ。人件費は道府県側が負担しているのに、人事権は政令市側にあるというねじれ現象が以前から問題視されており、制度見直しの議論が進められてきたという。私が無知なのは認めるが、万人に伝わっている話とも思えないので、「4月から市立小中学校教職員の人件費負担が県から市に移管するため…」という程度の説明はあっても良かった気がする。

 義務的経費は人件費のほかに、借金返済の公債費、生活保護や児童手当、保育所運営費等が含まれる扶助費からなり、福岡市の今年度当初予算の内訳は人件費が792億円、扶助費が2096億円、公債費が951億円となっている。この数年、人件費は約800億円、公債費は約1000億円でほぼ一定しているが、扶助費は毎年、増加の一途で、2015年度から16年度にかけても100億円近く増えている。このため17年度予算での義務的経費増大も、最初は扶助費が原因ではないかと疑ったのだが、これはやはり無理があった。

 では、具体的にどれだけの人件費が福岡県から福岡市に移管されるのだろうか。まず教職員数は、福岡市教委の『教育データブック』(2016年7月発行)によると、小学校4,029人、中学校2,229人、特別支援学校735人で、計6,993人。一方、県が公表している15年度のデータでは、平均給与は月額42万3133円で、これをもとにボーナス(年間4・1ヶ月)を含めた年収を計算すると約681万円になる。これらの数字が正しければ、約476億円が県から市の負担に切り替わることになる。これに伴い県から市へ財源の一部移譲や国からの交付税額の調整が行われるのだろう。ただ、476億円では、義務的経費の増大分とはまだ100億円以上の開きがあり、これ以外にも何らかの要因があると思われる。

 教職員の人件費移管は2003年、当時の小泉内閣によって閣議決定された構造改革策の一つで、政令市の次は中核市、さらに最終的には市町村に移管していくことが国の方針のようである。これまで同じ県内では同一条件だった教職員の定数や賃金は今後、自治体間で大きな格差が生じる可能性がある。財政力だけでなく、自治体トップの教育に対する意識の差によっても大きく違ってくるはずで、選挙の際には大きな判断材料になるかも知れない。

 【追記】福岡市の予算案が2月14日発表され、総額は8328億円、教職員の人件費移管による義務的経費の増額は652億円と判明した。上の試算は、教職員数(7,266人)はじめ前提の数字を間違っていたので、訂正する。
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