キグレサーカス

旧聞に属する話2010-キグレサーカス

 サーカスを生まれて初めて見たのは十数年前だから、結構いい年になってからのことだ。関心がなかったこともあるが、何より入場料が安くはないので、気軽に行ってみようという気にはならなかった。たまたまこの年、地元新聞社主催でキグレサーカスの福岡公演を行っており、販売店に割引券をもらったのが、サーカス初体験のきっかけとなった。

 会場の大テントが張られていたのは福岡空港近くの空き地、今は住宅展示場になっている場所だと思う。テントの外では2頭のホワイトタイガーが展示されており、「ガオーッ!」と声を張り上げていた(多分)。

 公演は予想以上に面白く、正直言って感動した。キグレサーカスの演目はこのころ、千葉真一さん、宇崎竜童さんの協力を得てドラマ仕立てになっており、ポスターも悲しげな女性ピエロをモチーフにした非常にシャレたものだった。サーカスといったら「空中ブランコ」(これはこれで凄いが…)という先入観をいい意味で裏切るもので、蛍光色の衣装をまとった団員が乱舞するフィナーレでは、会場のあちこちから感嘆のため息が漏れていた。

 これですっかりファンになり、同サーカスが数年後、北九州市のスペースワールド近くで公演を行った時も前売り券を買って出かけた。写真はこの時、記念に購入したパンフレットだ。確か値段は1000円だったと思う。「キグレサーカス事業停止」というニュースを聞き、映画のパンフレットなどを保存しているファイルを探してみたら、予想以上にきれいな状態で見つかった。貧乏人は物持ちがいい。

 キダムだのコルテオだので有名なシルク・ドゥ・ソレイユに比べれば「キグレなんてちゃちなもんだよ」という声が聞こえる気がする。しかし、冒頭「安くはない」と書いたサーカスの入場料だが、夫婦と子供2人の4人家族を例にすると、キグレならば計1万円以下で楽しむことができる。これがシルク・ドゥ・ソレイユとなると、1人当たりで1万円を楽に超える。この差は、我々庶民には大きい。

 事業停止の直接のきっかけとなったのは、新型インフルエンザの影響により昨年の川越公演が大不振に終わったためというが、それ以前から観客動員は低迷していたらしい。娯楽の多様化、あるいは少子化といったところが原因なのだろうが、こうやって「庶民に手の届く文化」がまた一つ消えていく。惜しいというより、悔しい気持ちだ。
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