多聞櫓が景観賞に

旧聞に属する話2010-多聞櫓

旧聞に属する話2011-多門櫓

 福岡市都市景観賞が先頃、発表された。建造物などを対象にした一般表彰には今年8件が選ばれたのだが、この中に国重文の福岡城南丸多聞櫓が含まれており、少し唐突な印象を受けた。景観賞は今年で24回目を迎えるが、過去の表彰物件の多くは現代的な建物だったからだ。福岡市のサイトにある選考委の総評を読むと、新しい大型建造物が少なく、対象を広げたことが多聞櫓選定につながったようだ。不況の影響はこんなところにも現れている。

 多聞櫓は城跡に残る数少ない建造物の一つで、他城の多聞櫓と同じく、長屋形式の建物だ。歴史的建造物がこの賞に選ばれたことは過去にもあるが、以前このブログで取り上げたことのある
福岡県公会堂貴賓館帝国大時代に建てられた九大本部や旧工学部本館西南学院中・高の旧講堂など近代建築がほとんど。しかも、すべてが街中にある。広大な城跡にひっそりとたたずむ多聞櫓は、かなり異質な表彰物件と言えるだろう。この選定には、単に候補がなかったという以外に、何らかの意味が込められているのだろうか?

 福岡城に関しては市が2004年、保存整備基本構想をまとめ、十数年がかりで城の復元を進めることを明らかにしている。復元といっても、一部市民団体が要求している、存否さえはっきりしない天守のことではない。元々城内にあった潮見櫓、花見櫓がメーンだ。この二つの櫓は、城主黒田家の菩提寺である崇福寺に払い下げられ、同寺に移築されていたのだが、市が1991年に買い戻した。現在は解体され、部材は城内に保管されていると聞く。

 つまり、基本構想策定のはるか以前から復元の考えがあったということだが、財政難に加えて不審火で焼けた下の橋御門の復元が優先されたこともあり、両櫓については長い間なおざりにされてきた。特に現市長になってから、福岡城に対する市の関心は極端に低下した感があり、両櫓の復元は一歩も進んでいない。部材は20年放置されたことで、傷みが進んでいるという。

 福岡市はいま、市長選のまっ最中であり、14日に新市長が決まる。この結果を待たずに、市の方針を推測するのは危険なことだが、多聞櫓の選定はあるいは、城跡整備に関して今後本腰を入れるというサインなのではないだろうか。九州新幹線の全線開通を来春に控え、福岡市の数少ない観光地として城跡に着目せざるを得ない事情が背景にあるようにも思う。市長選には8人が立候補しているが、現在のところ、現職の吉田宏氏、自公の支援を受ける元地元民放アナの高島宗一郎氏の優勢が伝えられている。どちらが当選するにせよ、城跡整備について来年度予算案でどのような方針が示されるか、注目したいところだ。
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