不法係留船が河口を埋める名柄川

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 福岡市西区を流れる名柄(ながら)川で、福岡県が昨年から、不法係留されているプレジャーボートの強制撤去を進めている。河口両岸には数年前まで、300隻近いボートが並び、ある意味壮観だった。あまりに堂々と係留されているものだから、まさか不法状態とは思わなかったぐらいだ。先日、たまたま近隣を通ったので、現状を見てきたが、依然として多数のボートが河口を埋めていた。カウントはしなかったが、100隻ぐらいはあっただろうか。以前より減っているのは確かだが、一掃には程遠く、沈みかかった廃船さえ放置されていた。撤去が行われているとは、到底思えない状況だ。

 これらのプレジャーボートは、護岸上にあるガードレールに係留され、護岸にはさらに、ボートに乗り降りするため金属製のはしごも吊されている。近隣住民は、車でやって来るボート所有者の不法駐車や、エンジン音に長年悩まされてきた。不法係留が増えてきたのはバブル景気の時代からというから、30年越しの懸案ということになる。

 不法係留のボートは、近隣の生活環境を悪化させるだけでなく、洪水が起きれば、水の流れを阻害し、被害を大きくする恐れさえ指摘されていた。それでも県は事実上、野放しにしてきた。「強硬手段に訴えても、いたちごっこになるだけ」という悲観論があったためだと聞く。正規の係留施設の利用料は結構高額で、近隣にある民間マリーナの使用料は、比較的安い陸置きの場合でも年間234,000~875,000円にもなる。不法係留は、この出費を嫌ったためだから、強制撤去しても他の川に移るだけ、という理屈で30年間手をこまぬいてきたのだ。

 なお、県が2011年に行った調査では、同年1月現在の名柄川河口の不法係留船が284隻だったのに対し、市内にある6収容施設の余力は600隻近かったというから、施設不足が不法係留の主たる要因ではないようだ。

 県はなぜ、ここに至って強制撤去に乗り出したのか。これは県の主体的な判断では全くなく、ただ単に国が全国の不法係留船を2022年度までに一掃する計画を打ち出したためだ。2011年の東日本大震災で、津波で流された不法係留船が二次被害をもたらしたことが国の決断の理由で、これを受け、県も重い腰を上げざるを得なかったわけだ。最初に不法係留の撤去に取り組んだのは東区の多々良川河口で、続いて名柄川では2017~19年度の3年間で一掃する方針だという。すでに10隻程度を強制撤去したらしいが、それでも多数のボートが居座る現状を見ると、難航必至と思える。所有者側には「何を今さら」という反発もあるだろう。

 多々良川では、県が恐れていた「いたちごっこ」は起きなかったようだが、名柄川の場合、具体名は伏せるが、数は少ないながらも不法係留が現存する川が比較的近隣にあり、注意が必要だろうと思う。ただ、県内のプレジャーボートの数自体は右肩下がりで減り続けており、日本小型船舶検査機構が公表している船舶統計によると、2011年度末には6,723隻が登録されていたが、17年度末には5,091隻にまで激減している。前述のように、正規の係留施設を利用する場合は相当な出費が必要になる。撤去を機会に、ボートを手放した人も少なくないのだろうか。
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