「カープ油津駅」を見てきた

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 お盆休み、宮崎県日南市に遊びに行き、今年2月に誕生したJR日南線の「カープ油津駅」を見てきた。駅自体は昔からあるが、広島カープのキャンプ地がこの駅のすぐ近くにあることにちなみ、駅舎が真っ赤に塗り替えられ、カープ油津駅の愛称が付けられた。カープが強いと駅まで真っ赤に染まるのかと感慨深かった。この駅舎を眺めている際に聞いたのだが、親族の青年が来春、日南に転勤予定だという。仕事場はこの駅近くで、宮崎市内にある自宅もJR駅そば。当然、日南線で通勤するのだろうと思ったが、マイカーで通う予定だという。山越えの県道(※)を通って片道1時間あまり。非常に体力を使う仕事のため、彼の家族は「日南に引っ越しさせた方がよいかも」と心配そうだった。

 自宅、仕事場とも駅近くにあるのに、列車通勤が選択肢にさえ入っていないのは、都会の人には実に不思議な話だろうが、日南線のダイヤを確認してもらえば、納得していただけると思う。朝の通勤時間帯、宮崎から日南方面に向かう列車は、早朝の5、6時台に各1本。私はまだ、布団の中にいる時間帯だが、これを逃すと、次は始業後の9時台になる。帰宅時間帯のダイヤは少しはましだが、それでも午後5~9時台、日南から宮崎に向けて1時間に1本走っているだけだ。残業で退社が遅くなれば、乗れない危険性さえある。あまりに融通の利かないダイヤを嫌い、「日南線での通勤は、ちょっと無理…」と、彼は話しているという。

 JR九州は今年3月、全線で117本も大減便するダイヤ改正を行い、利用客や沿線自治体から猛烈な反発を浴びたが、日南線も減便路線の一つだ。どんな路線かと言えば、宮崎市の南宮崎駅から鹿児島県志布志市の志布志駅までの約89㌔を結ぶ非電化単線のローカル線。運行列車の中には宮崎が始発・終点のものもある。鬼の洗濯岩で有名な日南海岸沿いを走っているのだが、過去に何度か乗った経験から言えば、車窓からその日南海岸が見えることは意外に少なく、むしろ山の中をトコトコ走っているイメージだ。

 沿線にはカープだけでなく巨人のキャンプ地もあり、プロ野球のキャンプシーズンには結構混雑することがある。また、青島、飫肥城などの観光地も沿線にはあるが、全体として利用客は非常に少ない。JR九州が公表している2017年度の輸送密度(平均通過人員)は774。これはJR九州22路線の中では、吉都線474、肥薩線507に次ぐワースト3だ。ちなみにJR九州の輸送密度トップの路線は、鹿児島線(門司港~鹿児島)の34,649、区間別では同線・小倉~博多の83,716(これとて首都圏の路線に比べれば、非常に少ない)。油津駅の利用者にしても一日平均で100人を超える程度。利用客が少ない→減便→不便になり、さらに利用客が減る――という負のスパイラルに陥っていることは容易に想像できる。

 JR九州は2016年10月、株式上場を果たした。利用客低迷が続けば、将来、株主から廃線を求められる恐れもあると危機感を抱いた日南市は、職員の宮崎出張は原則日南線を利用するなど、利用促進運動を進めている。しかし、沿線にある日南、串間市の人口推移を調べてみると、1955年には合併前の旧日南市、旧北郷町、旧南郷町と、串間市を合わせて13万人弱を数えていたが、2015年には7万2000人あまりまで激減していた。13万人でも多かったわけではないのに、沿線人口がこれだけじり貧の状態では、運動の効果も恐らく限定的だろう。日南線、吉都線の存続を危ぶむ宮崎県は6月、沿線自治体代表や有識者らからなる「みやざき地域鉄道応援団」なる組織を発足させ、路線維持のための方策を幅広く探り始めている。

 蛇足だが、冒頭の「山越えの県道」について。私のような中途半端に宮崎を知っている人間は、宮崎から日南に向かう際、日南海岸沿いを走る国道220号線を使いがちだが、大雨などで崩れ、度々通行止めになるこの道を地元民は敬遠し、旧田野町から山越えで日南に通じる県道28号線を利用することが多いらしい。
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