芦屋町の海岸で撮影された『トラ・トラ・トラ!』

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 調べ物でめくっていた『芦屋町誌』の年表に、目を引く記述があった。1969年の出来事に<映画「トラ・トラ・トラ」ロケ芦屋浜で>とあったのだ。町誌にはこれ以外に詳しいことは書かれていなかったが、真珠湾攻撃を題材にした1970年公開の戦争映画『トラ・トラ・トラ!』の撮影が同町で行われたということだろう。調べてみると、単なるロケではなく、同町の遠賀川河口に、連合艦隊の旗艦だった戦艦「長門」、空母「赤城」の実物大セットを作って撮影したという非常にスケールの大きな話だった。

 このセットが作られたのは、日本側の撮影を担当していた黒澤明監督(途中で降板)が舞台装置を忠実に再現することを求めたためで、1968年秋から約2億円の費用をかけて製作されたという。「長門」は高さ50㍍、全長224㍍、「赤城」は艦の前部を再現しただけだが、それでも長さ約100㍍。木製で、これに色を塗ったものだったが、近隣の丘陵からこの2隻を眺めると、突如として軍港が出現したようなリアルさだったらしい。セットの巨大さは近隣住民の度肝を抜き、ロケが休みの日には一般公開されたが、大変な人気だったという。

 この映画は米国・20世紀フォックスの作品で、制作費は2500万ドル。当時の為替レートは1ドル=360円の固定相場制の時代だから、日本円に換算すると90億円になる。セット製作費の2億円でさえ「日本映画だったら、2、3本は撮れるのに」と国内の映画関係者から羨ましがられたというから、途方もない巨費を投じた映画だった。

 公開当時、小学生だった私も戦争映画好きの親族に連れられ、見に行ったが、迫力に圧倒された記憶がある。この時代は、『バルジ大作戦』『空軍大戦略』『ネレトバの戦い』『風雪の太陽』といった戦争映画の大作が次々に公開されていたが、旧日本軍がアメリカ映画でお決まりの悪役ではなく、一方の主役として描かれていた『トラ・トラ・トラ!』の面白さは格別だった。ただ、私も親族も映画の舞台裏にまでは関心がなかったため、この映画の撮影が一部福岡県内で行われ、しかも巨大セットが作られていたことなど全く知らなかった。半世紀前のことを悔やんでも仕方がないが、この巨大セットは見たかった。(参考文献は『黒澤明VSハリウッド』田草川弘、など。写真はイメージ)
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コメント

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トラ・トラ・トラ

初めまして。
楽しく拝見させていただきました。ありがとうございます。
遠賀川河口にあったトラ・トラ・トラの撮影セットですが、小学校に入学した1969年4月に父母に連れられ北九州若松から見に行きました。巨大な長門や赤城のセットに驚かされた記憶がかすかに残っております。

Re: トラ・トラ・トラ

 コメントありがとうございます。
 長門と赤城のセットをご覧になったとは羨ましい限りです。
 本文中にも書きましたが、私も見たかった。