旧聞since2009

周回遅れの九州大

 4月25日に書いた「福岡県公会堂貴賓館 」の中で、九州大箱崎キャンパスの校舎群の行く末を心配した。改めて現地を見てきたが、中には完全に空き家になり、周囲を有刺鉄線で囲われた校舎もあった。場所によっては何となく廃墟のようで、学んでいる学生がかわいそうな気がした。 伊都キャンパスへの移転が完了するまで、あと9年。学生たちはそれまで、(福岡市の東と西に離れた)箱崎と伊都との間で落ち着かない学生生活を送らざ...

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くじゅうに咲くヒゴタイ

 写真は2年前の夏、大分県九重町のくじゅう・長者原のタデ原湿原で撮影したヒゴタイだ。普段花には全く関心がないが、数年前、この花を初めて目にした時は少し驚いた。写真でもわかるように、ゴルフボールのようなまん丸の花で、しかも鮮やかなるり色だ。美しさとともに、珍しい姿かたちにひかれ、以来、この花を見に長者原に行くのが夏の恒例行事になった。 最初に目にした時、花の素性を調べるため、長者原のビジターセンター...

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悲劇の藩校、甘棠館の石碑

 江戸時代、福岡藩には藩士の子弟を教育する藩校が二つあった。いずれも1784年(天明4年)に設立された東学問所・修猷(しゅうゆう)館と西学問所・甘棠(かんとう)館。このうち修猷館の名は現在も県立高校に受け継がれ、同高校は名門進学校として福岡県内では名を轟かせている。 一方の甘棠館、高名な儒学者・亀井南冥が館長を務めたこともあり、開校当初はライバル修猷館以上の人気を誇ったと伝えられるが、寛政異学の禁や不...

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稀少な明治の遺産、福岡県公会堂貴賓館

 建築や産業遺産を研究している人にとって、福岡は魅力がないというか、腹立たしい街らしい。古来から開けていたのだから、長い歴史を持っているのだが、その割に古い建物がないのだ。近代化や高度成長の過程で、古い建物を次々に取り壊していった。それなりに発展してきた街なのだから、ある意味当然なのだが、それにしても近代化の生き証人に対する畏敬の念がなさ過ぎた。旧・福岡県公会堂貴賓館(写真)や、旧・日生九州支店な...

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昭和の洋館燃える

 福岡市城南区にあれほど立派な洋館があるとは知らなかった。情けないことに、隣接する文化施設には行ったことがある。なのに初めて存在を知ったのが、全焼を伝えるニュースだったとは。目を閉じ、耳をふさいで生きていると貴重な体験の機会を失ってしまう。改めて痛感した。 洋館とは、18日白昼に火災に見舞われた「旧末永邸」のことだ。昭和初期の建設で、終戦直後には進駐軍の宿舎としても利用されたが、ここ数十年は空き家状...

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筑豊のこどもたち

 写真家・土門拳氏の『筑豊のこどもたち』の中に、気になる写真がある。炭住街の子供たちを写した1枚なのだが、この中の一人が、えらくしゃれた格好をしているのだ。横文字が胸に入ったトレーナーにジーンズ姿。履いている靴はズックと違い、今風のスニーカーのように見える。髪形も、他の子供たちのように坊主頭や前髪を切りそろえた“坊ちゃん刈り”ではない。年齢は10歳ぐらいだろうか。 『筑豊のこどもたち』と書いたが、現在...

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ペタジーニ!?

 昔、ヤクルトや巨人で活躍したペタジーニを、地元・福岡のソフトバンクが獲得した。日本球界復帰は6年ぶりらしいが、つい最近もバラエティー番組で見かけた気がするので、あまり「懐かしい!」という感じはしない。昨年までは韓国球界に所属し、大変な活躍をしていたそうだが、秋山監督は当面2軍で調整させる方針のようだ。 正直なところ、“守れない、走れない”選手ばかりを集めて、チーム編成としてはいかがなものかという気が...

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福岡城跡でまた不審火

 福岡城跡にある福岡市指定文化財「名島門」(写真)で14日、ボヤ騒ぎがあった。幸い門扉の一部を焦がしただけで終わったが、福岡城跡では2000年にも下之橋御門が半焼する不審火が起きており、市の文化財担当者らはヒヤリとしたことだろう。2000年の火災もそうだったが、今回も放火とみられている。愉快犯か何か知らないが、文化財とわかって火を付けるのだから、始末に負えない。下之橋御門の復元には、実に3億円が投じられてい...

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九大教養部跡、学園紛争の記憶

 写真は、福岡市中央区にある九州大六本松キャンパスの跡地。教養部跡と言った方がわかりやすい人も多いだろう。九州大は現在、福岡市西区の伊都キャンパスに統合移転を進めており、六本松キャンパスは昨秋、88年の歴史に幕を閉じた。今は閉鎖され、本館をはじめとする校舎群はすべて空き家の状態だ。もう40年ぐらい前になるだろうか。初めてこの本館を目にした時は、まだ学園紛争の爪跡が残っていた。校舎のガラス窓はほとんど割...

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ベイサイドプレイス再生

 福岡市の博多港に、ベイサイドプレイスという商業施設がある。運営会社だった市の第3セクターが破たんし、立て直しに乗り出した民間企業によって再整備が進められていた。この3月、ようやく再オープンし、先日、遅ればせながら出かけてきた。平日とはいえ、往時を知る者には少し寂しい人出だったが、今度は民間による運営だけに、機動力ある経営が期待できるだろう。 この施設の開業は1991年3月。いわゆるバブルの崩壊直後であ...

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大分空港道路、時速70㌔の花見

 大分県別府市方面から大分空港に通じる大分空港道路を走っていて、ずいぶんきれいな桜並木に出会った。途切れ途切れながら総延長にして2~3㌔ぐらいは続いていただろうか。福岡の桜は見頃を過ぎたが、ここは山間部にあるためか、ちょうど今(4月4日)が満開。並木の手入れも行き届いていた。ただ、これだけの美しさなのに、花見客は誰一人いなかった。なにしろ、この場所は“自動車専用道路”なのだから。 せっかくの風景も、...

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