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修猷館初の福岡県知事誕生

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 福岡県知事選の選挙運動期間中の話である。福岡市早良区に修猷館という県立高校がある。歴史を遡れば、福岡藩が設立した藩校に至るという福岡屈指の名門校なのだが、この学校前を選挙カーで通りかかった知事選候補者が繰り返し絶叫していたらしい。「修猷館高校生の皆さん、卒業生の小川です!」。ちょうど現場に居合わせた家族から聞いた話なのだが、家族は大笑いだった。「高校生には選挙権ないのにね」。

 この「小川」なる候補者は、元内閣府広報官の小川洋氏である。広田弘毅、中野正剛、緒方竹虎らをはじめ政界に様々な人物を輩出してきた修猷館だが、官選知事を除けば、なぜか今まで福岡県知事はいなかった。京都府知事(荒巻禎一氏)や、福岡市長に至っては阿部源蔵、桑原敬一、山崎広太郎氏と3人も送り出しているのにである。別に七不思議とまでは言わないが、初めて知った時は意外に思ったものだ。

 選挙戦は、多党相乗りの支援を受けた小川氏が、共産党推薦の元北九州市議と一騎打ちを演じ、当然ながら圧勝した。10日の投開票日、NHKをはじめとする報道各社は午後8時で開票が締め切られた途端、小川氏に早々と「当選確実」を打った。バカげた話だが、小川氏自身も事実上の統一候補に決まった時点で、「修猷館初の(選挙で選ばれた)福岡県知事」となることを確信したに違いない。修猷館前での絶叫は、故郷に錦を飾る思いだったのかもしれないが、家族の言うように選挙権のない高校生相手に名前を売り込んでも…。界隈を歩いていた有権者もなめられたものである。

 今回の知事選、福岡と同様、開票が始まっていない段階で「当選確実」が出たところが多かった。それだけ勝敗が見える選挙ばかりだったわけだ。昔、福岡県知事選は保革激戦が常で、統一選の天王山と位置づけられることさえあった。ところが、麻生渡氏が初当選したころから多党相乗りが当たり前となった。「知事選で激しく争っては選挙後もしこりが残り、県にとってマイナス」という理由から、政財界が候補者擁立の段階で“談合”を行うようになったためだ。

 今選挙も政党段階ですったもんだはあったが、結果的にそうなった。でも、こんな選挙が県にとって本当にプラスになるのだろうか。小川県政に対する監視とともに、麻生県政に対する綿密な検証が必要だろう。
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