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桑原敬一さんの銅像発見

旧聞に属する話2011-桑原氏胸像1

旧聞に属する話2011-桑原氏胸像2

 福岡市早良区にある福岡市博物館の敷地を散歩していたら、懐かしい人のブロンズ像があった。3代前の福岡市長、故・桑原敬一氏の胸像だ。像の建立を巡って市議会がもめたことは漠然と記憶していたが、まさか博物館に建てられていたとは思わなかったので、少々驚いた。てっきり博多湾内の人工島(アイランドシティ)あたりにあると思っていたのだ。昨年夏に完成していたらしい。

 桑原氏は労働事務次官等を経て1986年から98年まで、3期12年間にわたって市長を務めた人だ。市長在任期間はちょうどバブル景気直前から崩壊後の不景気の時期にかかっている。市長としての“現段階”での評価は「功罪相半ばする」といったところだろう。

 桑原氏の都市経営策を単純化すれば、アジア太平洋博覧会やユニバーシアードなどの大規模イベントを呼び水に都市基盤整備を進めるというものだったと思う。東京オリンピック以降、全国で多用されてきた政治手法だが、バブルの崩壊直後ぐらいまでは結構つぼにはまり、当時の福岡は「日本一の元気都市」などと“自称”していた。

 また、市の第3セクター博多港開発を使って博多湾内をガンガン埋め立て、企業に売却する事業も西部地区埋め立て(シーサイドももち、マリナタウン)までは好調だった。神戸市のやり方を真似たものだが、福岡市は一時「福岡株式会社」などともてはやされたものだ。

 桑原市政の下で福岡市の基盤整備は確かに進んだ。以前は漁港同然だった博多港は貿易港として飛躍的に発展し、都市高速をはじめとする道路網や競技施設等も立派になった。このあたりは「功」の側面だと思うが、その一方で、桑原氏が建設を進めた人工島は不良資産と化し、地下鉄3号線は走るごとに赤字を垂れ流している。不況の現在、むしろ桑原市政の「負」の側面の方が強調されているように思える。

 私も桑原氏のことを人工島建設を強引に進めた「バブリーな市長」と思っていた。そのため胸像が建っているとしたら人工島だろうと勝手に思い込んでいたのだが、博物館を会場に開かれた九州・沖縄サミット蔵相会合誘致などの実績を称え、この地に建立されたらしい。

 人工島や地下鉄3号線をけなしたが、こういった社会基盤・都市基盤は整備された時点では無駄に見えても、未来では先見性を絶賛されているかもしれない。現段階の評価と、後の時代の歴史的評価とでは大きく違う可能性はあるだろう。だからこそ市長の像などは、歴史的評価が定まってから建てても遅くはない気がする。

 胸像の出来は、少なくとも生前の桑原氏に良く似ている(ご本人はテレビで見た程度だが)。桑原氏の前の市長、進藤一馬氏の全身像は福岡市美術館前にある。
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