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サザエさん通りの大看板

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 福岡市早良区西新の県立修猷館高校前交差点の歩道に、アニメではなく原作漫画の『サザエさん』が描かれた大看板が登場した。高さ3.8m、幅4.6mと結構な大きさで、高校合格者数を宣伝している学習塾の大看板並みのサイズである。原作漫画の『サザエさん』とわざわざ断ったのはアニメの絵柄とはずいぶん異なるからで、アニメしか知らない世代の中には「本当にサザエさん?」と違和感を覚える人がいるかもしれない。

 看板が設置されたのは、この交差点が「サザエさん通り」の起点に当たるためで、目印の意味があるらしい。この通りの誕生前にも書いたことがあるが、原作者の長谷川町子さんは戦時中の一時期、この付近に疎開し、海岸を散策中に『サザエさん』の登場人物を思い付いたと言われている。海岸は現在では埋め立てられ「サザエさん通り」の一部になっている。また、疎開当時に住んでいた家も通り沿いにあったようだ。こういった事情もあって、版権を管理している長谷川町子美術館も日本で2番目となる「サザエさん通り」命名にOKを出したという(「サザエさん通り」)。

 「サザエさん通り」の第1号は、作品の舞台とされる東京・世田谷の桜新町で、当たり前のことだがこちらの方のイメージが強い。作品発祥の地が福岡だと言っても、そんな大昔の話は福岡人以外誰も気にしないし、知りもしない話だと思っていたが、熱狂的な『サザエさん』ファンの中には“聖地巡礼”よろしく福岡の通りを訪れる人もいるらしい。ところが、通りには修猷館高校や西新小学校、西南学院大学が並んでいるだけで、原作をイメージするものなど何もない。そのために大看板を設置することになったようだ。

 看板の除幕式は26日に現地で行われているが、式には市長、川口淳二・長谷川町子美術館長らとともに、地元を代表して西南学院大のバークレー学長も出席したという。同大学は通りを挟んで東西にキャンパスが広がり、現在は創立100周年(2016年)を記念してキャンパスの再編整備を行っている最中だ。除幕式に先立つ24日には、通りの西側から東側のキャンパスに移転新築していた本館が完成し、式典が行われている。

 学長の看板除幕式出席からも想像されるが、西南学院大側は自らが立地する場所が「サザエさん通り」として売り出されることを喜んでいる節があり、昨年は学長と川口館長との対談なども行われている。“サザエさん通りの大学”とは意外にブランドになり得るのだろうか。
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