旧聞since2009

消えたサーンプラプーム

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 些末な話だが、百道中央公園(福岡市早良区百道浜)の駐車場横にあったタイの祠サーンプラプームが消えている。確か夏の前まで、5基の祠が整然と並んでいたのだが、駐車場の拡張工事に伴い撤去されたようだ。1989年、埋め立てが完了したばかりの百道浜を会場に開かれたアジア太平洋博覧会の遺産の一つだった。ひょとっしたら、どこかに保管されている可能性はあるが、かなり痛んでいたうえ、あまり物を大事にしない福岡市のことだから、恐らく解体したのではないだろうか。

 ただ、祠と向かい合わせに置かれていたヤップ島の巨大な石貨は、設置場所が少し変わったものの健在で、以前は文字が薄れて読みにくかった説明文が新調されていた。この石貨もあちこちひび割れ、補修した跡はあるが、基本的に原型を保っているので、こちらについては今後も保存していく考えなのだろう。

 以前、この一帯には古代の地中海交易船キレニア号の復元船やインドネシアの高床式米蔵など、数々のアジア太平洋博覧会の展示品がそのまま飾られていた。雑多ながらもカーニバルの後の余韻みたいなものを漂わせ、散策しがいのある場所だった。その遺品たちが次々に朽ち果て、撤去されていき、一帯は近代的ながらも平凡な景観の街になってきた。

 アジア太平洋博覧会から今年ではや25年。四半世紀が経ったのだから、木造の建物や船が老朽化しても不思議はないが、少なくとも私の眼には福岡市が維持管理に注意を払ってきたとは思えなかった。財政難の中、わざわざ金を掛けるまでの代物ではなく「朽ち果てたらそれまで」というスタンスだったのだろう。それはそれで一つの考え方かもしれない。

 アジア太平洋博覧会に参加したタイやインドネシアの関係者が仮に福岡市を再訪することがあった場合、25年前の自国の展示物が残っていなくても別に不満には思わないだろう。しかし、もし健在だったならば、恐らく感激し、福岡市の行政や市民に対して深い信頼を抱いたのではないかと思う。“アジアのリーダー都市”を僭称する福岡市にとっては、少し惜しい話だった。


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コメント : 2

コメント

No title

サーンプラプームは痛みが相当激しかった印象があります。福岡市の管理の仕方も悪かったのですが、拳大かそれ以上の石が投げつけられたらしく、破壊されているものもありました。粉々になった破片が石とともに周囲に散乱し、かろうじて原型を保っているサーンプラプームは見るに堪えない感じでした。
福岡市の対応もですが、市民のモラルも問われているような気がします。

Re: No title

コメントありがとうございました。
まさにおっしゃる通りだと私も思います。