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葦書房の閉店

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 福岡市中央区の老舗古書店「葦書房」が29日閉店した。27日の西日本新聞記事によると、後継者がいないためだという。学生時代、高くて新品を買えなかった教科書を探しにこの書店に良く通った。社会人になってからは数年に一度立ち寄る程度だったが、年内閉店の話を聞き、先日久しぶりに店へと向かった。ところが、見当たらない。「もう閉店したのか」と驚いて帰宅後に調べてみると、2年前に中央区草香江から同区六本松に移転していた。

 移転場所は六本松交差点に面したビルの1階。ビルの隣は喫茶店「三和珈琲館」。これまた学生の頃に通っていた懐かしい店だ。「コーヒーがマズくなるから煙草を吸うな」だの、「コーヒーはブラックで飲め。後味を楽しむために水は飲むな」だの、「コーヒー豆を食ってみろ」だの何かと要求の多い愉快な店だった。

 葦書房が永く店を構えていた草香江には一時、他にも数店の古書店が集まり、“草香江古書の街”と名乗っていた。個性的な街になるのではないかと期待する声もあったのだが、やはり福岡市の規模で古書店街は難しかったのか、次々に店を閉じ、最後に残った葦書房も移転の後閉店を決めた。

 30日夕、近くで用事があったので、ついでに店の前を通ってみたが、店の前にはまだセール本がいつものように並び、閉店したとは到底思えない雰囲気だった。

 葦書房閉店のニュースは、西日本新聞の他には朝日新聞が報じていたぐらいで、地元でも特に話題にならなかった。今春、南区にあった100円ラーメンの「勝龍軒」が閉店した際は結構な騒ぎだったが。葦書房創業は1972年。一方、勝龍軒開店は68年だが、ラーメンの価格を100円に設定したのはこちらも72年だったという。タイプは異なるが、奇しくも同じ42年間の歴史を刻んできた福岡の大事な文化二つが今年、相次いで姿を消した。
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