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九重“夢”大吊橋はやはり怖かった

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 大分県九重町の鳴子川渓谷に架かる九重“夢”大吊橋を11年ぶりに渡ってきた。全長390㍍、高さ173㍍。2006年の完成当時、歩行者専用の吊橋としては長さ、高さとも日本一だった。現在では、長さは静岡県三島市に2015年完成した三島スカイウォーク(長さ400㍍、高さ73㍍)に抜かれたが、だからと言ってこの橋の怖さが薄れたわけではない。高所恐怖症のくせに好奇心から初めて大吊橋を渡ったのは2008年8月だったが、あまりの恐ろしさに足がすくみ、渡りきるまでに連れよりもはるかに時間が掛かった。性懲りもなく再びチャレンジし、高さ173㍍の空中を歩く恐怖を再び味わってきた。

 ただ、前回とは若干違ったことがある。初めて渡った時、首からカメラをぶら下げていたのだが、周囲の景色に目を向ける余裕などは全くなく、この時の写真は渡り終えた後に撮った記念写真ぐらいしかない。ところが、今回は平日で空いていたこともあり、途中で何度も立ち止まっては眼下の絶景を写真に収めてきたのだ。ここ最近、山に登っては断崖から平気で下を見下ろし、家族から「危ないからやめろ」と注意されることも度々だった。高所恐怖症がやわらいでいるのではないかと感じていたが、再度大吊橋を渡り、その意を強くした。

 そういえば、子供時代から高所恐怖症ではあったが、小学校低学年頃まではむしろ、「バカと煙が高いところに上りたがるのは本当だな」と親にののしられて育ってきた。それがなぜ高所恐怖症となり、今頃になってなぜ治りつつあるのか、自分でもさっぱりわからないが、私の高所恐怖症とは、要するにその程度のものだったのだろう。

 九重“夢”大吊橋は、観光振興のため町が20億円の予算を投じて建設したものだ。20億円のうち、9割近い17億3500万円が過疎債などの借金で、町は通行料(大人500円、小学生200円)収入により12年がかりで返済する計画だった。ところが、開業1年目に目標25万人の10倍近い230万人が押し寄せるなど大変な人気を呼び、借金はわずか2年で完済。それだけでなく、未就学児に限っていた町の医療費補助を小中学生まで拡大できたというのは有名な話だ。2017年3月には開業以来の通行者が1000万人を突破した。

 この橋の成功は、過疎や財政難に苦しむ全国自治体の注目の的となり、観光客に交じって多数の視察団も詰め掛けたという。しかし、彼らの中には九重町側の説明に刺激を受けながらも、「多額の税金を使って観光施設を造っても、もし誰も来なかったら」と不安を口にする人もいたらしい。橋を渡るスリルに加え、紅葉の名所・九酔渓をはじめとする周囲の景観、さらには九州を代表する観光地・阿蘇くじゅうのほど近くに位置することなど、橋が大成功を収めた理由はいくつか思い浮かぶが、道路事情の悪さを考えれば、「知る人ぞ知る観光名所」で終わった可能性もゼロではなかった気がする。

 その道路だが、くじゅう方面に向かう際は、普段は大分道九重ICから九酔渓の険しい山道を経由するか、湯布院ICから少し逆戻りしてやまなみハイウェイを利用することが多いのだが、この日は四季彩ロード(広域農道)という九酔渓の迂回路を初めて通ってみた。結構快適な道だった。
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