2020/01/07
日南海岸に溶け込んでいた複製モアイ像
宮崎県日南市の日南海岸沿いにあるサンメッセ日南に行ってきた。太平洋を見下ろす丘陵上に、モアイ像の複製7体が並ぶ行楽施設。どうせ安っぽい偽物だろうと勝手な先入観を持っていたのだが、初めて実物を見ての感想は「意外にちゃんとしている」だった。もちろん、チリ・イースター島にある本家を見たことがないので、比較はできないが、重量感あふれる石像は、青い空と海がつくり出す日南海岸の景観の中に、不思議なほど溶け込んでいた。
施設側は、このモアイ像について「イースター島の長老会によって世界で唯一許可された複製」だとPRしている。実はこの情報については事前に知っており、かえって胡散臭さを感じていた。「イースター島の長老会ってなんだよ」と。ところが、以前に行ったことのある家族が「案外良いところだ」と薦めるので、渋々ながら同行したところ、先入観を覆されたわけだ。
施設は1996年4月開園。7体のモアイ像は凝灰岩製で、台座を含めた高さは約5.5㍍、重さは約20㌧。本家と同じく、海を背にして立っている。「世界で唯一許可された複製」という点については、現地説明板には次のように書かれていた。
(略)モアイの修復に参加された高松の多田野弘氏、そしてモアイ修復委員会の奈良国立文化財研究所及び飛鳥建設株式会社 石工 左野勝司氏、又イースター島の考古学者クラウディオ・クリスティノ・フェランド氏も参加し、学術的鑑修と卓越した技術によって、更にイースター島長老会と島民の人々のご理解によって代表的なモアイ、アフ・アキビ7体の完全復元復刻が完成しました。
世界で初めて、そしておそらく唯一であろうモアイの完全復刻がこの地に許されたのは、太陽からのメッセージ(日向・ヒムカの国)であり、モアイ修復チームの功績の賜であり…。
世界で初めて、そしておそらく唯一であろうモアイの完全復刻がこの地に許されたのは、太陽からのメッセージ(日向・ヒムカの国)であり、モアイ修復チームの功績の賜であり…。
妙に詩的な文章で、よく理解できなかったため、帰宅後に新聞記事等でモアイ複製建設の経緯を調べ直したところ、以下のようなあらましだった。
イースター島のモアイ像の多くは、1960年のチリ大地震に伴う津波などにより倒壊したままで、現地では修復を望みながらも重機がないため着手できない状況だった。たまたまテレビ番組でこの苦境を知った高松市の大手建設用クレーンメーカー「タダノ」社がチリ政府に支援を申し出た。タダノ社側から協力要請を受けた奈良国立文化財研究所、及び奈良市の飛鳥建設創業者であり著名な石工であった左野勝司氏も加わり、モアイ修復日本委員会が組織された。彼らによって1992年から6年がかりでアフ・トンガリキ遺跡のモアイ像15体が修復され、この功績により飛鳥建設に複製建造が認められた、ということらしい。
本家イースター島のモアイ像修復に関わった建設会社が、その成果をもとに作った複製だったわけで、安っぽいパチモンでないのは当然だった。なお、左野氏はモアイ像のほかにも、高松塚古墳壁画保存のための石室解体やカンボジア・アンコールワットの修復など、国内外で文化財の保存・修復に携わっている。
このイースター島のほか、ペルーのマチュ・ピチュやシリアのパルミラ、トルコのカッパドキアなど行ってみたい遺跡は山ほどある。だが、自分の年齢や経済力などを考えれば、どれ一つとして夢はかなわないだろう。複製とは言え、それなりにちゃんとしたモアイ像を見ることができ、満足することにした。
サンメッセ日南は、入場料大人800円。
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