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大濠花火大会復活の可能性は

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 先日、久しぶりに福岡市中央区の大濠公園に行き、観月橋などの写真を撮ってきた。今月初めに取り上げた名島橋と名島川橋梁について調べた際、大濠公園にある5基の橋のうち、4基は昭和初期の1927年完成で、福岡市内では有数の古い橋だと知って急に興味を覚えたのだ。

 5基の橋とは、池の中央にある中島に架かる全長106㍍の観月橋(写真1、2枚目)など4橋と、黒門川に架かる同22㍍の舞鶴橋(写真3枚目)で、中島に架かる4橋のうち、最も南側にある皐月橋だけは1989年に架け替えられている。大濠公園は、1927年に開かれた東亜勧業博覧会の会場となったのを経て、2年後の1929年に開園しているが、皐月橋以外はその歴史とともに歩んできたのだ。なお、福岡市に残るコンクリート橋で、大濠公園の橋以上に古いのは、1923年(大正12年)完成の名島川橋梁以外では、いずれも1925年に完成した新開橋と姿見橋。この2橋については名前も聞いたことがなかったが、どちらも中央区薬院などを流れる新川に架かる小さな橋だった。 

 話は変わるが、大濠公園と言えば、毎年8月1日に開かれてきた花火大会が一昨年を最後に廃止され、福岡市民にショックを与えたことは記憶に新しい。見物客が40万人を超える規模まで膨れ上がり、安全対策の限界などから継続が難しくなったという理由だった。私には縁もゆかりもない催しだったので、特に何の感慨もなかったのだが、廃止を伝える主催者・西日本新聞の社告を読んで、長年抱いていた漠然とした疑問が晴れた。疑問とは、この花火大会に関する子供・思春期時代の思い出が全くなかったことだ。たとえ自分が見物に行ったことがなくても、開催を伝えるテレビニュースを見たり、行った友人から話を聞いたりなど、花火大会にまつわる何らかの記憶はあってもよさそうだが、それすらもなく、完全な白紙状態だったのだ。

 この謎を解いてくれたのが、社告の次の一文だ。「67~78年の間、大会は中断しましたが、福岡市制90年・大濠公園開園50年の79年に復活して以降、大濠公園改修工事(88年)の年を除く毎年開催し、福岡の夏に欠かせない行事として定着しました」。私が小中高校生の時代は、ちょうど中断期間中で、そもそも大会自体が開催されていなかったのだ。これでは記憶などあるはずがない。

 67~78年に中断していた理由を調べてみようと思い、複数刊行されている西日本新聞の社史を図書館でめくってみたのだが、「第十七回大会の後、諸般の事情で十二年間中止した」(『西日本新聞百二十年史』1997)とあるだけだった。中断が始まったのは「いざなぎ景気」(1966~71年)の真っただ中。一方、復活した79年は、前年暮れに起きたイラン革命を契機とした第2次石油危機の時代だった。復活した年の方がむしろ景気は悪かったのだから、中断の理由は、協賛金が集まらなくなったなどではないと思う。『百二十年史』によると、規模の小さかった第1回(1950年)の見物客も30万人に上っている。推測だが、今回の廃止の理由と同様、主催者のコントロールを超える見物客が押し寄せるようになり、安全な大会運営に自信を持てなくなったというのが中断の理由だったのではないだろうか。

 大濠花火大会の中止について、「しょせんは西日本新聞の経費節減策」とクールに解説したがる人はいる。確かにその一面はあるのだろうが、金の問題だけならば、経費を賄える分の入場料を取ったり、資金力がある企業などが主催者に名乗り出たりすれば、復活の可能性はあるだろう。市制140年、公園開園100年の2029年などは絶好機かもしれない。

 しかし、西日本新聞が廃止の主因として挙げた安全面の課題を解決するのは、やはり難題だと思える。2017年から始まったシーサイドももちの花火大会のように、大濠公園全体を有料エリアとし、さらに定員を絞れば、入場者を抑制することは可能だろうが、周辺に押し寄せる人波までを規制するのは困難だろう。たとえ会場外の事故であっても、主催者は責任を免れない。兵庫県明石市で2001年7月に起きた花火大会での歩道橋事故は、死者11人、重軽傷者183人を出す大惨事となったが、事故を巡る裁判では、主催者の明石市や警察、警備会社の担当者も厳しく責任を問われた。廃止を決断した西日本新聞関係者の脳裏には、この事故の記憶が刻まれていたに違いない。

 大濠花火大会は恐らく、昭和、平成時代の昔話になることだろう。私が縁もゆかりもなかったのは、花火大会が開かれる時間はおおむね仕事中だったためだが、一度は行って体験しておくべきだったと今さらながら後悔している。福岡市の歴史の1ページだったのだから。
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